開催日:2009年7月28日(火)
会場:東京工業大学(大岡山キャンパス)百年記念館 フェライト会議室
自動車業界を筆頭に「製造業における商品開発のデジタル化・3次元化」により,「商品開発期間の半減」などの業務改革が実現した.その一方で,「部品形状の3次元データ作成に工数を要し,設計者への負担が増えた」,「図面に記述していた設計ノウハウを伝達することが難しくなった」との問題提起もされている.
各企業ではこの問題・課題に対して鋭意取り組んでいるが,製品開発業務に直結する卑近な問題ゆえに,学会などの中立の場で論議し情報交換されることは少ない.D&S部門として,この問題への対応策のひとつとして本講習会の開設を決めた.
本講習会では,この問題へのひとつの対応策として,大学,企業において研究の第一線でご活躍の研究者を講師に招き,「3次元CADを賢く使いこなす手法」等について分かりやすく教示してもらい,ディスカッションした.
3次元CADを用いた設計や,そのデータを活用するエンジニアリングが,企業における設計開発業務の中心となり,リードタイム短縮や設計品質の向上に大きく寄与している.またその普及・活用の陰では3次元設計の弊害も指摘されている.ここでは,まず3次元設計の得失について述べ,また今後のものづくりの中での3次元設計の方向性について議論する.
東京大学 先端科学技術研究センター 教授 鈴木 宏正
デジタルプロセス(株) 取締役 加藤 廣
設計行為とは曖昧模糊とした設計イメージを具体的な情報,最終的には3次元CADに投影する一連の行為である.しかしながら,最終的な3次元CADに設計行為者の想いがすべて反映されているわけではない.これが時として,設計の現場では問題となる.ここでは,設計行為と設計情報の関係についてできるだけ実際の設計問題に即して解説する.
(株)東芝 研究開発センター 研究主幹 大富 浩一
設計業務の効率化策のひとつとして,パラメトリックCADモデルを利用した自動化(テンプレート)が上げられる.特に開発期間短縮に取り組んでいる自動車産業では,多くのメーカーがCADテンプレートに注力している.ここでは,自動化(テンプレート構築)の進め方について紹介する.
デジタルプロセス(株) 次長 山ア 貢
業務活用に繋がる3Dテンプレートの構築においては,使いやすさ,汎用性,ロバスト性等の要件を確保していくことが重要と見ている.これらの要件を確立していくための留意点等を,これまでの事例を交えながら紹介する.
デジタルプロセス(株) 部長 稲荷 泰明
豊富な機能を持つ3次元CADを使いこなし,設計者が質の高い設計検討を実施し,優れた製品を生出すためには,標準化された設計検討手順の自動化が欠かせない.NXにおける,効率化・自動化の手法と実例について,AVIデモを交えて紹介する.
SIMENS PLM Software JP Director 志田 穣
製品品質の向上には機械設計とソフトウェアの連携に関する取り組みが重要といわれている.それらを効率的に開発するためのコラボレーション環境について紹介する.
IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 ICP・エグゼクティブITS 枚田 哲也
日産自動車が実現した「超短縮新車開発プロセスV-3P」の方策として大きく貢献した「ノウハウを組み込んだ設計支援システム"ノウハウCAD"」について解説する.「ノウハウCAD」は,ベテラン設計者の設計の進め方を「フロー表」に書き下しデータベース化することにより,若年の設計者が「WEBブラウザ」で参照・トレースすることを可能にし,間違いのない設計を効率よく進める仕組みである.手順をトレースする中で3次元CADの活用を効率化するために,3次元 CADテンプレートを活用する.近年,この仕組みを発展させ,計画初期フェーズでの車両諸元/基本構造検討にも適用可能な道具に洗練しつつある.
日産自動車(株) 製品計画部 プロセス開発グループ 主管 浅野 浩二
[受講者]
参加28名(企業24名、学生4名)
[参加の目的]
[役に立ったか]
[今後のテーマ]
今回の講習会は,これから本格的に3次元CADを使いこなして行こうとされている企業のCAD推進者をターゲットとし,「ナレッジCAD」と呼ばれる「設計の標準化・自動化」の手法にフォーカスした.
「3次元CADが当たり前に使い込まれている」ことを前提として,「その上を行く効率化」を訴求しようとしたが,受講者のアンケートからも分かるように,多くの企業が「その手前で苦労している」と推測される.
初めて開催した本講習会を,今回の振返りを生かし,受講の皆様の期待に応えるべく,改善して次年度の講習会企画に生かしたい.
加藤 廣(デジタルプロセス株式会社)
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