08-41講習会「革新的ものづくりのための最適設計法入門」開催報告
山崎光悦 (金沢大学)
2008年9月4〜5日に,早稲田大学理工学術院キャンパスにおいて「革新的ものづくりのための最適設計法入門」を昨年度に引き続き実施した.企業所属の個人会員45名,教育機関・公設研究機関の会員1名,学生15名の合計61名の参加があった.
本講習会は,最適化技術の基礎や利用法,それらを統合したものづくりの先進事例を紹介し,ブラックボックスとして扱われがちな最適化技術を,有益な設計技術として活用するための基礎知識について教示すること,さらには学生・新入社員の教育の一環を目的として企画している.昨年度の同講習会参加者数(59名)と比較すると,企業や教育機関等からの参加者は変化していないものの,学生の参加者が若干増加しており,学生教育の一環としても活用していただけたものと思われる.最適設計法に関する研究の第一線で活躍する研究者を大学・企業から講師として招き,各講師が携わる最適化技術の分野における知見についてわかり易く解説するように努めた.また昨年同様,講習会資料とは別に,講師が使用するパワーポイントファイルを予習教材として受講者に事前に配布し,当日の講義がより理解し易くなるように配慮した.事前の資料配布は受講者にとって,非常に好評であった.講習会の内容に対する満足度は図の通りである.
【 講習会全体の満足度 】
また,本講習会の講義内容の概要および受講者の声は以下の通りである.
1.「CAEと設計の基礎」 最適化技術を活用する上で必要となるCADの形状モデリング技術やCAE技術について解説された.
(受講者からの声)
・ いきなりCAEの話でなく,基本的な力学の理論(経験値)に基づく設計についての議論があって良かった.
・ イントロダクションとして,分かりやすく適切であった.
・ わかりやく,とてもよかった.実際の設計に役立つ形で説明していただいたのでよかった.
(内容の満足度)
2.「最適設計技術の基礎」 最適設計法の分類とその各種解法,設計感度解析法と近似最適化問題の構成など,最適化要素技術について解説された.
(受講者からの声)
・ 体系的でわかりやすい説明であった.
・ イントロダクションとして,分かりやすく適切であった.
・ CAEの結果がう呑みにできないため,定式化する必要性というのは当然と言えば当然だが,長い間業務に携わっていると忘れがちになるので気をつけたい.
(内容の満足度)
3.「形状・形態(トポロジー)最適化の基礎」 形状および形態(トポロジー)最適化の基礎的な考え方と,その具体的な最適化問題の定式化や実装方法を,その応用例を交えて説明された.
(受講者からの声)
・ 業務に近い内容でためになった.
・ 各手法の長短がよくわかった.ソフトウエアの使い方の説明もあり良い.
・ 最新の研究動向に加え,すぐに使える情報もあり,大変勉強になった.是非参考にさせて頂きたい.
(内容の満足度)
4.「応答曲面近似法と大域解探索の基礎」 実用的な時間内に設計者が最適解を得るための有効な方法である応答曲面近似の基礎や,大域解探索の手法について,事例を交え解説された.
(受講者からの声)
・ 講義として非常におもしろく聞かせて頂いた.内容も非常によく分かり,深く考えることができた.
・ 現存の手法の物理的な解釈がわかり,視野が広がった.
・ 各手法の長短をわかりやすく解説頂いた.
(内容の満足度)
5.「信頼性・ロバスト設計法の基礎と応用」 不確定性が構造に及ぼす影響を考慮するための設計法として,不確定性を確率変数としてモデル化する「信頼性に基づく最適設計」および非確率量としてモデル化する「ロバスト設計」について説明された.
(受講者からの声)
・ ロバスト最適法の基礎についての概略を分かり易くみせて頂いた.
・ 正規分布を仮定すれば,確率変数の扱いもそれ程難しくないことが分かった.
(内容の満足度)
6.「多目的最適化の基礎と応用」 複数の目的関数を同時に最適化し,パレート最適解を求める手法である多目的最適化手法についての基礎と,多目的最適化手法を使用する上で留意しなければならない点について説明された.
(受講者からの声)
・ 多目的を扱う手法を体系的にわかりやすく説明された.
・ 最新の研究動向を加え,示唆に富んだ講演内容であった.
・ 満足化トレードオフについて、使い方を考えてみたい.PSOも使い初めているので参考になった.
(内容の満足度)
7.「最適化ソフト活用の基礎―What Optimization Can’t Do―」 今日広く普及し始めている汎用最適化ソフトを活用する上で理解する必要がある最適化独自の視点や特徴について解説され,最適化ソフト活用のポイントが説明された.
(受講者からの声)
・ 最適化の注意点がまとめられており,非常に有用な内容であった.
・ 商用ソフトの概略,直交表の問題等,知らない事がよく分かった.
・ 本講演は「こういうときは,こうしたほうが良い」とか,今はこういう現状だ,とかのご説明がメインだと感じた.とてもわかりやすかった.
(内容の満足度)
二日間の講習会を通して,どの受講者も熱心に講義に聞き入っていた.また,質疑応答の後に個別に講師と議論をする受講者が多く見受けられ,受講者の意欲の高さが窺えた.さらに,初日の講義終了後の情報交換会では,20名程度の受講者と講師の参加があり,最適化技術に関する話題を中心に,企業や大学,社会人や学生の垣根を越えて活発な情報交換が行われていた.本講習会は,受講者と講師の双方にとって,非常に実りのある講習会であったと思われる.最適化・最適設計に対するニーズは依然として高く,引き続き来年度もこの講習会を企画したいと感じている.
最後になりましたが,会場を提供の便宜を図っていただいた早稲田大学創造理工学部 山川 宏 学部長,ならびにお世話を手伝っていただいた研究室の学生さんに感謝の意を表します.
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