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2008年度の年次大会は,「機械の日・機械週間」にあわせて8月3日(日)〜7日(木)にかけて,横浜国立大学を主会場に開催されました.設計工学・システム部門ではこのうち8月4日(月)及び6日(水)に計5つ(7セッション)のオーガナイズドセッション,2件の基調講演,及び同好会が企画行事として実施されました.本ページでは,参加者と広報委員会が中心となって,各行事の様子をまとめて紹介します.
本セッションは,設計工学・システム部門と計算力学部門のジョイントセッションとして開催されており,本年度は13件の講演があった.最適化手法や構造最適設計に関する研究,人間工学的アプローチによる設計工学に関する研究報告があったが,形状最適化に関する研究報告が多く見受けられた.形状最適化に関する研究報告の中でも特に,有限要素ネットワークを活用したと思われるベーシスベクトルの生成法は,大変興味深い研究であり,今後の発展が多いに期待できる研究報告であった.また最適化手法に関する研究では,Krigingと多項式を併用した応答曲面法や多目的Particle Swarm Optimizationなど,最適化分野における最先端の研究報告があった.設計工学・システム部門と計算力学のジョイントセッションという性格上,最適設計を研究している多くの研究者が一堂に会す貴重な場であり,有意義な議論がなされており,この分野の研究の今後の発展を期待させるものであった.
北山 哲士(金沢大学)
年次大会1日目(8月4日)の午後に,京都大学大学院工学研究科・航空宇宙工学専攻の西脇眞二先生を講師として,「形状・トポロジー最適化の最前線」と題した基調講演が開催され,60名を超す聴講者を集めた.構造最適設計問題でも,形状最適化やトポロジー最適化の歴史を振り返り,現在の最先端の研究事例の報告がなされた.形状最適化法の有力な方法の一つである力法や,トポロジー最適化における均質化法の簡単な説明の後,近年盛んに研究が行われているレベルセット法やフェーズフィールド法を用いた形状・トポロジー最適化に関する説明があった.均質化法によるトポロジー最適化が実際の設計問題へ応用されるにつれ,いくつかの問題が指摘されており,それらの問題点を克服するための一つの方法として,レベルセット法を用いた形状・トポロジー最適化に関する方法が事例を交え説明された.構造の形態変化を許容しながら明確な外形形状を得るレベルセット法では,均質化法で常に問題となるグレースケール問題に対し簡単に克服できることなどを,アニメーションを用いて丁寧に説明され,聴講者はレベルセット法による形状・トポロジー最適化の概念を簡単に理解できたものと思われる.また,均質化法に代表されるトポロジー最適化手法が,構造最適設計問題を中心に研究されていたのに対し,レベルセット法では,熱問題や電磁波導波路の最適設計問題など,多くの応用分野があることが紹介され,聴講者の関心を引いた.
北山 哲士(金沢大学)
本セッションでは,「環境」をキーワードに,機械製品から社会制度に至るまでの様々なシステムを対象とした設計に関する研究発表が行われた.具体的には,製品のリデュース設計を支援することを目的とした部品間接続構造の簡略化手法の提案,ライフサイクル設計と製品設計とをマルチスケールにおいて統合するためのフレームワークについての構想,心身へ影響をおよぼす機器設備音に関する調査研究とその影響を低減するための方策,シナリオをベースとした持続可能社会シミュレーションを可能とするためのシナリオ構造記述法に関する研究についての4件の発表があった.それぞれ設計の対象が異なるものの,問題意識や方法論において共通するものがあり,幅広い分野の専門家による活発な意見交換が行われた.
福重 真一(大阪大学)
今年度も例年と同様に,ものづくりに深く関わっている本部門,生産システム部門,生産加工・工作機械部門の3部門合同の同好会が行われた.例年立食パーティ形式で行われているが,今年は横浜での開催ということで横浜中華街の中にある中華料理店で円卓を囲みながらの会食となった.今年は生憎年次大会の開催日程が,本部門の対象分野・領域と関連の深いASME IDETC 2008と重なっていたため,参加者が例年に比べてかなり少なく3部門合わせて13名の参加であったが,おいしい中華料理にお酒も入って口も滑らかになり,大変盛り上がった.3部門同好会は,本部門の関係者だけでなく,ものづくりに関わる他部門の方とも知り合い語らうことのできる好い機会となっているので,(特に若い人を中心に)来年度以降の積極的な参加をお勧めしたい.
妻屋 彰(神戸大学)
青山先生の基調講演に引き続いてシステム設計の高度化と題したOSが行われた.本セッションでは,設計知識のテンプレート化の手法に関して再利用時のスケールを可変に扱うことのできる手法,海洋深層水利用プラントの基本計画段階の設計活動を支援する手法,CADシステムに依存しない設計ルールや制約条件知識の管理機構と設計パラメータチェック機能のプロトタイプ開発,解析手法の誤差によって生じる設計可能領域境界線が不透明になる領域が設計解に与える影響を検討するシステムの開発,についての研究発表があった.発表件数は4件とやや少なめだったが,基調講演と関連の深い発表が続き,大変興味深いセッションであった.
妻屋 彰(神戸大学)
マイクロマシンやマイクロシステムの創製に向けて,マイクロサイズの造形や加工に関する研究が盛んに行われている.本セッションでは,マイクロサイズ製品の製造装置,製造技術,計測などに関連する発表が7件行われた.最初の発表は,粉末焼結法によるマイクロ機械部品のラピッド製造装置の研究開発に関する報告であり,二番目の発表は光造形モールディングによるセラミックス構造体の作成方法の提案であった.三番目の発表は, 三次元形状モデルを用いたMEMS工程設計システムの研究開発に関するものであり,四番目はマイクロ光造形による光駆動粘性マイクロポンプの研究であった.五番目の報告はマイクロ流れのステレオPTV計測システムの開発であり,六番目はマイクロフローメータによる非定常流体特性の計測,最後の発表はマイクロ製品の多視点画像からの三次元形状復元と形状の評価に関する報告であった.
前川 卓(横浜国立大学)
情報機器を介しての人とのインタラクションやコミュニケーションにおける身体性(身体のはたらき)に着目し,一体感や共有感・存在感が実感できる仕組みやシステムの開発を目指しての研究発表が中心であった.とくに三輪敬之教授(早稲田大学)らのShadow communication systemで,空間性の拡張性を目指した霧状スクリーンの開発や存在感強化のためのグリッドを用いた影の表現手法に関する研究など,身体と切っても切れない非分離の存在である影を用いて互いの存在感を伝えあうための新たな表現法が提案され,興味深かった.また山田貴志(香川大学)らの空気圧駆動型腕相撲ロボットシステムの発表で,力覚提示による人とのインタラクション支援を教育現場に応用する試みも紹介され,今後の身体性を活かしたヒューマンインタフェース設計への応用が大いに期待されるセッションであった.
渡辺 富夫(岡山県立大学)
来年度の年次大会は9月に岩手大学を主会場に開催される予定です.設計工学・システム部門では,ここでも本年度と同様に様々な企画を予定しておりますので,ご興味を持たれた方は是非発表者として,または聴講者として奮ってご参加下さい.
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