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2015年度部門賞と一般表彰の受賞者の紹介

(※所属はいずれも受賞決定時のもの)

部門賞受賞者

部門功績賞

安田 仁彦(名古屋大学 名誉教授)

同氏は,2009年に機械力学・計測制御部門内に設置された,計算力学技術者資格(振動分野)検討委員会の委員長に就任され,それ以来,認定試験開始に伴う組織の変更はありましたが,現在まで委員長として振動分野認定試験の企画,実施にご尽力されてこられました。2009年当時は,計算力学技術者資格認定事業として固体力学分野と熱流体力学分野の認定試験はすでに行われており,振動分野の認定試験の実施が強く望まれていました。そのような中,同氏は検討委員会の委員長として検討委員会をまとめ,2012年度に2級試験開始を実現されました。翌年の2013年度に1級試験開始を実現され,2015年度には上級アナリスト試験の開始を実現されました。これによりすべての級の試験が実施されることとなり,以前から試験が行われている固体力学分野および熱流体力学分野と肩を並べるに至りました。受験者数についても2013年度より毎年300名程度で推移しており,本試験が機械力学・計測制御部門に関わるCAE解析技術者にとって重要なものとして認知されています。

学術業績賞

野波 健蔵(千葉大学 特別教授)

同氏は,機械力学・制御に関する査読付き学術論文236編をはじめ,著書18冊,育成した博士の人数51名など優れた学術業績をあげられました。その結果,日本機械学会論文賞,部門パイオニア賞などを受賞されました。1994年出版の「スライディングモード制御」は,先駆的書籍であり,1998年出版の「MATLABによる制御理論の基礎」,「同制御系設計」は高度な制御理論を平易に記述した新しい教科書として高い評価を受けました。2015年出版の「制御の事典」は制御系設計の基礎編,実践編,応用編の構成で,32年ぶりの制御に関する体系的事典です。特筆すべきは1998年から無人航空機・ドローンの研究開発を開始し,2001年に日本で最初に小型無人ヘリコプターの完全自律制御に成功しました。ドローンの自律制御に関する学術論文はIEEEなどの学術雑誌に約50編ほど掲載され,2010年には「Autonomous Flying Robots」として出版され世界的に高く評価されています。さらに,200社以上の企業を束ねたコンソーシアムを組織し,かつ,大学発ベンチャー企業も立ち上げて,学術業績を企業化して実践的な社会貢献をされ,今日「ドローン研究開発の第一人者」となっています。

技術業績賞

中村 滋男(株式会社HGSTジャパン 機構開発統括部 担当部長)

同氏は,磁気ディスク装置,光ディスク装置,電子部品検査装置などの精密位置決め機構について長年研究開発を行い,日米の機械学会を中心に多くの研究成果を発表されました。磁気ディスク装置のヘッド位置決め機構においては,多段アクチュエータシステムの開発,流体起因振動の低減において先導的な役割を担い,20年間で1000倍になった磁気ディスク装置の記憶容量の増大に貢献しました。光ディスク装置,電子部品検査装置においては,斬新な機構を提案されました。当該分野における,解析主導設計やMEMSの導入,学術ロードマップ,設計技術の変遷についての情報発信は,技術立国日本の次世代に対する啓蒙活動になり,若手技術者の学位取得や日本機械学会賞他各賞の受賞につながっています。

パイオニア賞

横山 誠(新潟大学 准教授)

同氏は,非線形制御システムの理論と応用に関する研究をされています。特に,近年注目されている4ロータ小型ヘリコプタの制御問題に対して,先駆的に取り組み,本質的なバックステッピング制御手法から,幾何学を応用した姿勢制御,あるいは適応制御手法までを様々提案されています。また,レスキュー用車両型ロボットを開発し,強い非線形特性を考慮した制御手法を種々提案し,ロボットの悪路走破性の向上を実現されています。さらに,新幹線の更なる高速化に不可欠なパンタグラフの接触力制御問題に取り組み,力学的考察とシステム理論の視点をもって,独創的な制御器設計論を展開されております。このように,複雑な非線形制御問題に対して,本質的な解決方法を着実に提案されております。

パイオニア賞

石田 祥子(明治大学 専任講師)

同氏は,折紙工学に数理科学的視点を取り入れた,重要な論文を日本機械学会,米国機械学会,日本応用数理学会に多数発表し続け,多くの招待講演の依頼など世界から注目されています。従来は真っ直ぐな筒を折り畳む手法しかなく,曲がった配管の折り畳みや複雑な筒形状を無理なく折り畳む手法の開発が強く期待されていました。これに対し同氏は,任意曲率で湾曲する複雑な筒形状をも規則的なパターンで折り畳める設計法を,等角写像変換を用いて開発し,医療器具の設計,自動車部品の設計においても現在幅広く共同研究が進められています。同氏は,これまでに日本応用数理学会2012年度若手優秀講演賞,同学会2014年度論文賞,2014年度明治大学連合駿台会学術奨励賞,2014年度日本機械学会論文賞,2015年資生堂の女性研究者サイエンスグラント等を受賞しています。また,米国機械学会では設計工学部門のselected paperにも選出されています。更に免震折畳み構造の論文も日米の機械学会論文として高い評価がなされています。

部門一般表彰者

部門貢献表彰

竹原 昭一郎(上智大学 准教授)

長年機械力学・計測制御部門で活躍しており,平成26年度の部門幹事として部門の活性化に大いに貢献いたしました。また部門講演会であるDynamics and Design Conference 2015において,幹事としてその開催と運営に尽力し,講演会を盛会に導きました。

部門貢献表彰

中原 健志(九州産業大学 准教授)

部門講演会であるDynamics and Design Conference 2013において,現地実行幹事としてその開催と運営に尽力され,同時開催された第13回「運動と振動の制御シンポジウム」とともに講演会を盛会に導かれました。また,本年度も日本機械学会年次大会での当部門の代表委員等,部門関連の講演会の運営に貢献されています。

オーディエンス表彰(Dynamics & Design Conference 2015 優秀発表者)

菅原 佳城(秋田大学)
論文名:大変形する物体と剛体が接触する挙動についての解析法の提案

平木 博道(宇宙航空研究開発機構)
論文名:ロケット用ターボポンプの軸方向振動に関する検討

萬 礼応(慶應義塾大学)
論文名:機能的移動能力評価システムLaser-TUG(高齢者のTimed Up and Go試験への適用)

オーディエンス表彰(第14回「運動と振動の制御」シンポジウム 優秀発表者)

山口 達也(信州大学)
論文名:軟弱野菜自動収穫機における目標刃先軌道に対応した制御目標値設定

D&D2016における表彰式