特別企画

特別講演1

日 時
2019年12月5日(木)14:00~15:00
講 師
吉光 徹雄 氏(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)
演 題
はやぶさ2搭載MINERVA-IIローバの小惑星表面探査
講演内容
 2014年12月に打ち上げられた小惑星探査機はやぶさ2は,2018年6月に目的地である小惑星Ryuguに到着し,1.5年におよぶ小惑星近傍滞在ミッションを終え,今まさに小惑星から離脱し,地球に向かおうとしている. はやぶさ2には,MINERVA-IIと呼ばれる小型のローバシステムが搭載された.MINERVA-IIには合計3台の分離プローブが含まれるが,このうち2台の双子のローバ1A,ローバ1Bは,2018年9月21日に母船であるはやぶさ2探査機から分離され,小惑星Ryuguに着陸した. ローバ1A,ローバ1Bは,その後,小惑星表面をホッピングにより自律的に移動探査し,小惑星の複数地点で,表面の温度や電位の直接計測,詳細な地形の撮像を行なった.ローバ1Aは113小惑星日,ローバ1Bは10小惑星日の間,取得したデータを母船に送信した.2台のローバにより取得された小惑星表面の画像は600枚以上になる. MINERVA-IIローバによる探査は,世界初の小天体表面移動探査である.また,日本における初の惑星探査ローバであり,日本もようやく他の天体に降り立って長期にわたってその場観測を行なうという太陽系探査の新たな時代に突入した. 本講演では,工学的な観点からMINERVA-IIローバの技術を述べるとともに,小惑星Ryugu表面における探査がどのようなものであったか解説する.
講師略歴
2000年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻修了,博士(工学).2000年に前身となる文部科学省宇宙科学研究所に入所し,現在にいたるまで,月・惑星探査ローバの移動メカニズム,自己位置同定,自律化,超小型探査機の研究開発に従事.2003年に打ち上げられた小惑星探査機はやぶさでは,MINERVAローバの研究代表者をつとめ,その経験をもとに,はやぶさ2ミッションにおいてもMINERVA-IIの研究代表者として,ローバシステムの設計,製作,運用を行なった.

特別講演2

日 時
2019年12月5日(木)15:00~16:00
講 師
磯部 雅彦 氏 (高知工科大学 学長)
演 題
東日本大震災を契機とする南海トラフ地震津波への二段防災
講演内容
 2011年の東日本大震災では東北日本の太平洋側を中心として壊滅的な被害を被った。そこからの復旧・復興に際して、数十年から百数十年に一度という比較的発生頻度が高い、最大クラスよりは低い津波(レベル1津波)に対しては、防潮堤等の海岸保全施設によって陸域への浸水を防ぎ、人命保護に加え、住民財産の保護、地域の経済活動の安定化、効率的な生産拠点の確保をはかることとした。そして、最大クラスの津波(レベル2津波)に対しては、住民等の生命を守ることを最優先として、必要十分な社会経済機能を維持するようにすることとした。
 将来起こると危惧されている南海トラフ地震津波に対しても、今まさにこのような二段防災の考え方で、防災対策が進められている。さらに、高潮、洪水、内水氾濫についても水防法の改正により二段防災の考え方になったと言える。
 本講演では、東日本大震災の実態を津波発生のメカニズムから解説し、巨大津波の発生からその特徴、被害の実態を紹介する。続いて、南海トラフ地震津波に対する津波避難施設、避難態勢、海岸保全施設の整備の現状を紹介する。特に、高知県においては、高台への避難路、津波避難ビル、津波避難タワー、津波避難シェルターが建設されたり、海岸堤防の改良がおこなわれるとともに、三重防護という浦戸湾の地形を利用した特徴ある防護施設の建設計画が策定されていることを見る。これらにより、津波防災の現状を総合的に明らかにするとともに、その中で、制御に関連した防災施設などの課題を述べる。
講師略歴
1975年東京大学工学部土木工学科卒、1981年工学博士(東京大学)。横浜国立大学助教授、東京大学工学部教授、同大学院新領域創成科学研究科教授、同副学長、高知工科大学副学長等を経て、2015年4月から高知工科大学学長。専門分野は海岸工学。