ヒューマンコミュニケーション研究の基盤として,まず母子間の原初的インタラクション・コミュニケーションに着目し,母親の語りかけに対して乳児の手足の動きの引き込みを音声・画像解析して,そのインタラクションのメカニズムをマン・マシン・インタフェースに応用しようと試みたのが1978年であるから,この身体的インタラクション・コミュニケーションの不思議さ・可能性に魅了されて早40年以上になる.この間,母子間インタラクションから成人間インタラクション・コミュニケーション,集団コミュニケーションの引き込みを解析して,うなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをロボットやCGキャラクタに導入することで,対話者相互の身体性が共有でき,一体感が実感できる「心が通う身体的コミュニケーションシステムE-COSMIC(Embodied Communication System for Mind Connection)」を研究開発し,人を引き込む身体的コミュニケーション技術(身体的引き込み技術)を研究開発してきた.さらにメディア場にはたらきかけることで場を盛り上げる身体性メディア場の生成・制御技術を研究開発し,身体的引き込み技術の重要性を実証してきた.とくに音声から豊かなコミュニケーション動作を自動生成する技術は,人とかかわるロボット・玩具,メディアコンテンツ,e-Learningやゲームソフト等に導入・実用化されており,教育・福祉・エンタテインメントなど広範囲な応用が容易に可能である.身体的引き込みによる一体感や共有感は,幸せな気持ちや安心感を支えるもので,人がつながるヒューマンインタフェースの要である.高度メディア社会,超高齢社会の生活情報技術として本システム・技術を紹介する.