趣旨
東日本大震災により我国は精神的にも物理的にも甚大な被害を被っています.その後のタイ洪水による関係工場の稼働停止,円高による輸出量の減少なども影響して,昨年の日本の貿易収支は31年ぶりに赤字となり,日本の製造業は非常に厳しい環境に置かれています.
高い経済水準にある日本にとって,安い価格で生産できる新興国との価格競争に勝機はありません.安い労働力を求め海外移転を進めると産業の空洞化が起こります.健全な技術立国として存続するには,「海外で売れるものを国内で生産する」という当たり前の考え方を基本に置くことが重要です.世界で売れる魅力的な製品にも様々なタイプがあります.高性能・高機能など製品そのものの価値を重視するもの,ニーズに基づいた製品の開発やそれを提供するスピードが支配的なもの等です.工学に関係する各学会は,このような製品提供に関する要請に応えるべく重要な役割を担っています.
また,理工系離れと言われてから久しいですが,天然資源に恵まれない日本にとって製造業は非常に重要であり,それを担う若い技術者の育成が必須です.そのためには,製造業をより魅力的にし,若者が自らの意志で進路を希望する分野にしなければなりません.
前述の要請に対して,設計工学・システム工学の学術領域が請け負う部分は多々あります.本講演会は,それに対する提案や問題解決のヒント等をお示しする絶好の機会でございます. 多くの皆様にご参加いただき,最新の研究成果の発表とそれに基づく活発な討論を心よりお待ち申し上げます.
実行委員長 北村充