LastUpdate 2015.7.1
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No.138 「二度目のコラム」日本機械学会第93期庶務理事
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このコラムに執筆させていただくのは、今回で2回目になる。前回は2009年だったから、5年たっている。前回は「理系への入り口」と題して、子供の理科離れについて書かせていただいた。
その数年前から、いわゆるゆとり世代の課題や数学力の低下が指摘され、また、理工系学部の進学数の減少など理系離れとして取り上げられ、勉強会や研究会がさかんに実施されていた。機械学会でも将来を担う小学生中心に、機械分野の楽しさを知ってもらうべく、2007年の機械の日から子供向けの企画として「機械の日・機械週間」作文コンテストを開始した。ジュニア会友を中心に力作の応募をいただいた。集まった作文を読むと、想像力に溢れなんとも頼もしい気持ちになった。どれも優劣つけがたかったのであるが、何とか審査を行った。また、どんな記念品を選ぶかなど、企画する側も大いに楽しんだ。機械の日のいわれを踏まえ「たなばたたんざくコンテスト」、また、今では絵画コンテストへとバトンタッチされている。あの当時作文を書いた少年少女は、高校生、大学生あるいは社会人になっているだろう。
今振り返ってみると、当時と今では取り巻く環境の移り変わりがぐんと早まっている。日本はモノづくりに強みを持つ一方、より、コトづくりのウェイトが増している。以前から指摘されてきたことであるが、IoTなどの進展や諸外国の活発な動きを背景に一層顕著となっている。このように社会の変化が早く、課題やニーズが複雑かつ多様化しているから、技術を磨き上げて製品を提供するだけでは満たされない世の中になっている。そう考えると、社会や人の問題に挑戦するということになってくるので、自然の仕組みや、モノの物理に加えて、人や社会への興味、理解、そして洞察がますます必要になってくる。このような視点を得るための学びや実践の環境は、理系文系という議論を超えたものであると思える。
さて、再度このコラムに執筆することになった今、足下の課題は機械学会そのものの会員減少だ。これに効いているのは若手減少だ。いや、若手といってもアカデミアの会員ではなく、企業会員の減少に歯止めがかからないという状況である。期初の会長挨拶でもその危機感が述べられている。支部・部門でも個性あるイベントが企画されており、ミクロに見れば会員減少の程度の濃淡はあろうが、全体感として、「企業の30歳代」の機械学会離れがある、と言っても過言ではないだろう。学生で入会いただいても、企業に就職し、しばらくすると退会するということであり、今の減少率が継続されると、20年後には、企業会員は今の半分になる。「企業の30歳代」は業務が繁忙であり、平日の昼間の時間を使って学会活動に参加することは、現実的には難しい状況と考える。もちろん、それでも出席したくなる・させたくなる魅力あるイベントなどを行うことは重要だ。一方で、機械学会のひとつの価値は機械系の情報のハブと考えると、機械学会ならではの情報の効果も大きいだろう。
情報の獲得の仕方が私たち世代と異なる若い世代に向けた価値、魅力をどう再構築して行くか。一朝一夕に解決するものでは無いが、知恵を集めて解決の方向性を探りたい。皆様のご協力をお願いする。