LastUpdate 2012.12.26

J S M E 談 話 室

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JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。
本会理事が交代で一年間を通して執筆します。

No.111 「機械エンジニアは魅力的な職業か?」

日本機械学会第90期副会長
田中 守(三菱重工業(株) 技師長)

田中 守

 本稿のヘディングには、「気軽な話題を集めて提供するコラム欄です」とありますが、バックナンバーを読み返して見ると、中々どうして皆さんお堅い内容が多く、はて困ったと思いましたが、気を取り直して本来の気軽な随筆の線に戻したいと思います。

自己紹介
 筆者は、昨年度新任理事として庶務理事を務めさせて頂き、任期の2年目で金子会長から副会長には企業人も必要だからとご指名を受けて、今年度副会長を務めさせて頂いております。専門は、耐震、流体関連振動、異常診断等の機械力学分野ですが、管理職になってからは論文を書くことも、講演を聞くこともほとんど無くなり、学会活動の実戦から離れて、学会運営面で協力させて頂いている次第です。

企業人にとっての学会
 本会の会員の年齢構成を見ると20歳過ぎの年代の会員数が最大で、25歳付近に大きな落ち込みがあり、卒業講演に向けて入会して、企業に就職して退会すると言うパターンと解釈できます。学生会員の就職先が必ずしも機械関係の職場とは限らないので、このような傾向もある程度は止むを得ないと思います。一方、機械系の職場へ入ったとしても企業人の立場から見ると、
 ・学会発表するのは、研究、開発部門の一部の企業人に限られる。
 ・講演会、講習会等の受講費は会社負担であり、特別員割引の特典も利用できる。
など、実利面で本会員であることの恩恵を受けている企業人は一部であると考えられます。

 では、それでも会員を継続している企業人は本会に何を期待しているのでしょうか。
 本会の定款の第3条では、「本会は機械及び機械システムとその関連分野に関する学術技芸の進歩発展をはかり、もって人類社会の発展と安寧及び福祉の向上に貢献することを目的とする。」と記されておりますが、企業所属の会員の多くは、機械工学を通じての本会の社会への貢献に期待しているものと考えます。

機械エンジニアは魅力的な職業か?
 本会は機械エンジニアのSocietyですから、機械エンジニアの立場から見ると、機械エンジニアが誇りを持って働ける社会環境が整い、次世代を担う子供達にとっても機械エンジニアが魅力的な職業になってこそ、機械工学の継続的な発展が期待でき、社会への貢献も果たせるものと思います。

 では、学生や子供達にとって機械エンジニアが魅力的な職業となるためには、どんな打ち手があるでしょうか。

 現在では機械の日の行事を始め、各支部でも子供達に機械の面白さや感動を与える啓蒙行事が企画されており、更に高校〜大学生に対してはロボコンコンテスト等も各地で開催されて、いわゆる「作る歓び」を体感できる機会が増えて来たのは、次世代の機械エンジニアを育てるのに有効だと思います。また、機械遺産も2007年以来、55件が制定されマスコミの注目度も上がって来ています。

 また、企業も同様の取り組みを進めており、機械製品の実物や模型等による原理説明の展示を公開しています。例えば、(我田引水で恐縮ですが)、横浜市にある、弊社の三菱みなとみらい技術館(http://www.mhi.co.jp/museum/)は小学生の校外学習コースとして定着していると聞きます。

 私事ですが、筆者が小学生の頃は、小学校の近所にある文房具屋の主力商品は文房具ではなくプラモデルで、野球などと同じくプラモデル等の工作も小学生のポピュラーな遊びの一つであった記憶があります。筆者もご多分に漏れず、プラモデルにラジコン、鉄道模型などに没頭し、模型屋さんからお歳暮をもらう程の上得意になっていました。その当時に子供向けの工作雑誌に「差動歯車の原理」と言う記事があり、自動車の駆動軸の差動歯車が内輪差を吸収する仕組みが理解できて、子供心に機械の面白さに感動した覚えがあります。今になって思い返せばその辺が機械工学を志したルーツであると思います。

 上記の様な諸活動が、筆者の様に子供達に機械の面白さに気付かせ、感動を与える事で機械エンジニアを志すきっかけになる事を期待しております。

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