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No.85 「デジカメとネットワーク」日本機械学会第87期副会長
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一昨年全国発明賞を受賞する機会に恵まれた効果もあるのだろうが、三年半ほど前にここに書いたインターネットの威力を改めて思い知らされている。全く面識のない人が受賞の件をよく知っていたり、このコラムまで読んでいたりするのである。発明賞の方は超高圧液圧成型装置に関する固い話なのでここではデジカメの話をしよう。驚くべき事に隣のテーブルで知人と会食をしていた人に突然デジカメの台数を聞かれたりする。デジカメは34台にレンズは52本になりましたと答えているが、そのうち8社製の17台がレンズを交換できる一眼レフカメラである。各社のマウントが違うため互換性は殆どない。こうなるとどんな撮影条件の場合にどの組合せを持って出たら良いかを決めるのが非常に難しい。
古い名の知れたレンズであればスウェーデンのPhotodoのページのMTF特性(スピーカーの周波数特性と類似の空間周波数特性)を比較すれば解像度の優劣が簡単にわかる。このMTF特性を公表しているメーカーもあるが実測値ではなくて理論計算値だったり測定条件が異なったりする。微細な白黒の縞模様が印刷された正式のターゲットを使うと照明等の条件統一が極めて面倒なので、大きめの液晶ディスプレイに最小1ドット単位の縞を表示してデジカメで撮影するというデジタル時代にマッチした簡便法を思いついた。アメリカ国立衛生研究所のオープンソースでパブリックドメインのImageJを使ってJAVAでプラグインを書き半径方向と円周方向の解像度を多点自動計測してエクセルでチャートにしている。カメラとレンズのセットとしての解像度を定量的に比較することにより機材選定は随分楽になった。カメラのトップメーカーの役員をしている友人に数十ページに渡る測定比較結果を見せてコメントを求めたら「凡そ考えられる限りにおいて最悪の客である。ウルサイ。」という最高の評価(笑)を得た。
近頃ネットではHDR(ハイダイナミックレンジ)処理なるものが流行っている。中でも写真がまるで絵のようになる特殊なトーンマッピング処理が面白い。相当重たい数値計算なのでハンドリングの楽なImageJのプラグインを誰かが既に書いているのではないかと思い検索してみた。書きかけのプラグインが外国のページに見つかったが、それを見てアッと驚いてしまった。私がふざけて付けた変数名が皆そのまま使われており、公開した覚えのない私のMTF測定のプラグインがベースになっているのが一目瞭然なのである。世の中もややこしいことになって来たものである。知りたい事をネットで検索して自分のページがトップに出てきた時には嬉しいようなアホらしいような複雑な気持ちになる。しかも、最近知ったのであるが、検索するパソコンが違うと出てくる順番が違うらしいのである。
写真は被写体で八割決まりと言われるので被写体の話に移ろう。元々は街角写真派で街を歩きながら何でも撮っていたのであるが、ネットで知り合ったカメラ仲間の影響もあってだんだん野鳥にハマってきた。野鳥には野鳥の都合があり、こちらの希望など聞いてくれないので簡単には傑作が撮れないことが人気の理由のようである。ネットを見ていたカミさんが「コレってあそこの公園じゃない!」と言うので調べてみたら、なんと三十年近く住んでいた家の近くにある公園に宝石と異名をとる「カワセミ」が昔から居たらしい事が判った。近頃、週末は野鳥を求めてあちこちの公園を巡り歩くことが多い。機材は一眼レフから天体望遠鏡を使ったデジスコまで種々雑多で複雑怪奇な状況になりつつある。最新の機材で先月撮ったカワセミをご紹介しよう。30枚/秒で連続撮影した静止画像をトリムしてgifアニメーションにしてある。レンズを除去して互換マウントを取付けた世界に十台もない改造品のコンパクトデジカメと高級一眼レフレンズという珍奇なセットで撮った。撮像素子が小さいので35mm換算では2350mmという超々望遠になる。シャッター速度1/1600秒を確保するためにISOを800まで上げているのでノイズは多いが結構気に入っている。ネットの情報を頼りにこんなことを始めたらキリがない。趣味の話なのでノルマも納期もないし焦る必要は全くないのが救いではあるが。
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