最初から私事で恐縮ですが、我が家族は三代揃って日本機械学会会員であります。よく私学では、三代続いた校友などとして大学の広報の一環でとり上げられることがありますが、それとて多くの場合には、大学は同じでも学部や大学院が異なる場合が多いようです。同じ学問領域、部門に三代は、比較的珍しいのではないでしょうか?一代目は90歳、まだまだ情熱衰えず、ここ10年、体力の方でいささか不安がありますが、頭脳の方は冴え渡り、二代目、三代目(三代目はかなりの部分お小遣いでつられてますが)を叱咤激励し、あわよくば現役復帰を目指しております。二代目は、筆者ですが、ここは部門が異なりますが兄弟で学会員ですから、さらに面白い例ではないでしょうか?我々の世代は、そろそろ現役引退のころ、いわゆる団塊の世代です。多分長期化が予想される引退後を見据えて、しきりに何をやるか考えております。三代目は、学生員ですが、最近、研究発表の機会を何回か得て一番学会を利用させていただいているようです。厳しい状況にありましたが就職もおかげさまでメーカーに決まりました。
のれんを継ぐ、とはもう古語になりそうな言葉ですが、やはり機械工学は奥が深く、半世紀以上にわたって興味の対象となっているのでしょう。わが家族は、その意味でみんな親の背を見て、素直に育ってしまったようです。
一方、学会をマネージする立場からは、かなり難しい課題かと思いますがそれぞれの世代にあった施策を打ちながら、生涯現役として活躍できる場を提供する策を打ち出す必要を感じております。幸い、イノベーションセンターをいち早く立ち上げていただき、検討がなされていることに敬意を表する次第です。
さて、世代間の溝を感じた経験を一つ取り上げたく思います。この夏、いわゆる廃棄物の島として名を馳せてしまった香川県の豊島の豊島学(楽)会へ参加しました。フィールドワークを行う中国留学生を含む10名の学生と一緒に出掛けました。不法投棄廃棄物処理の方は、あと3年半を残して50%の進捗で、無害化まであと一歩のところです。
大変、風光明媚で、農作物、海産物にも恵まれた島でした。それに、なにより旧来のコミュニティーが機能しており、高齢者同士が助け合う昔の下町を見るようで大変懐かしい思いも致しました。いわゆる廃棄物の影響は風評であって、今後は、旧来の日本の良さを残した島としての発展が大いに期待されるのですが、そこでの議論の一つに無害となった跡地をどう利用するかにありました。
多くの住民は高齢化が進み、廃棄物に係る調停に関与された世代(高齢化が進み、亡くなった方も増えている)と、それを伝説として聞いている世代、そして何も知らない世代に大きく分けられます。当然、第二、第三世代はあまりこのことについて興味がなく、豊島学(楽)会にも賛同しない立場にあるようで、跡地利用も多分、観光資源にし、産廃が投棄された過去を消してしまいたいと考えているようです。
表面だった対立はないように思いますが、深い溝のようなものを感覚的に感じました。そこで提案ですが、このような負の遺産を抱える跡地も、是非機械遺産に認定していただき、このような溝を埋める一助にしていただければと思うのです。いかがでしょうか?
豊島不法投棄現場
豊島海水浴場
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