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No.66 「Global Summit on the Future of Mechanical Engineering」のご報告日本機械学会第86期会長
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今般、20年後の機械工学のあるべき姿と機械技術者の果たすべき役割について議論をするGlobal Summit on the Future of Mechanical Engineering(Washington D.C., USA)に、参加致しました。 Global Summit on the Future of Mechanical Engineering
開催:2008年4月17,18日
Global Summit on the Future of Mechanical EngineeringはASME(American Society of Mechanical Engineers)が海外の学術団体に対して呼びかけを行い、20年後の2028年の機械工学のあるべき姿と機械技術者の果たすべき役割について議論する場として企画された。 参加者は本会を始め、中国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、スペイン、チェコ、エジプトなどの8学会、National Academy of Engineeringなどの国内団体、その他ロッキード社、BP社など18カ国、約120名の参加者により、本会による技術ロードマップの発表やグループに分かれての討議が行われた。 本サミットの次第は、公式には4月17,18日の両日であったが、16日夕にはサミット会場においてASME会長をはじめとする各ボードの理事と招待者約100名による歓迎の会食会が開催され、開催に先立って相互の交流が行われた。 17日は早朝7時30分(現地は夏時間のため、冬時間では6時30分)より朝食が供され、8時より講演が開始された。本会は8時30分からのセッションの2番めとして本会の組織と活動ならびに技術ロードマップについての講演を行った。
その後、参加者は3つのグループに分かれて討議を行った。この討議は同日午後、翌18日にも開催され、サミットの総括を行うにあたって重要な役割を担った。午後は講演で始まり、中国機械工程学会のLu Yongxiang会長の講演も行われた。その後の討議の後、招待者を含む約100名はバスで歓迎晩餐会へ移動し、ASMEの Sam Y. Zamrik会長の挨拶ならびに 中国機械工程学会のLu Yongxiang会長による中国における研究・産業についての現状報告が行われた。
18日は前日と同様、7時30分より朝食、8時より講演が行われ、その後討議を経て、前2回の討議を含め総括的討議を行い、今回のサミットにより明らかとなった問題の確認と今後の対応について、参加者の合意を得る全体の検討会が開催された。 この結果、今回のサミットでは、技術者を取り巻く環境の変化に対する工学(特に機械工学)の果たすべき役割の大きさと、そのために必要となる技術の急激な発達と工学を含む様々な取り組みに加え、政治的な討議と公共的政策と意識変革が必要であるとの認識について参加者の合意をみた。 このため、参加者は工学の果たすべき役割を認識し、教育においても貢献を高め、様々な社会や文化を超えた規範となるべき目標を定めること、多様な方式を使って技術者を育成し、学会や公共、学術組織や政府などとも協働することなどを掲げ、12時に閉会した。 今回のサミットは、ASMEが初めて行う試みであったが、20年後を想定した技術や社会、技術者を取り巻く環境までも含めた議論の中で、技術者の取るべき役割を広範囲に描き出したこと、更に技術者から社会へ向けた発信を意図した、極めて戦略的な試みと言える。このため、開催にあたっては事前調査を行い、これらを公表するなど、ASMEの各ボードにおける専門分野の活動とは区分される事業といえる。 今回、本会は創立110周年事業の一環として開始された技術ロードマップを示し、技術の来るべき未来を描き出した。これに対しサミットの講演者の多くが、機械工学を取り巻く環境(エネルギー、健康、水、今後の人口増その他)と、学生への機械技術への関心を高め、技術者教育の充実の必要性が語られた。このため、これら社会のニーズと技術の可能性が映し出す未来について、新たに検討を行うことの有用性について多くの参加者が言及していた。 また、今回のサミットに参加した中国機械工程学会は、中国の将来の工業力の増大と技術発展を力強くアピールした。更に17日の晩餐会においても、中国における工学・技術の高度化について発表を行い、参加者の多くが中国とインドの将来性について関心を示した。 本サミットにおける個々の課題については、NALの調査報告書が既にASMEのHPに掲載されているので参照願いたい。 最後に、本会の技術ロードマップに大きな関心を寄せられたことは、学術団体である本会の存在を示したものであり、関係部門ならびに取り纏めをいただいた矢部 彰氏を初めとする創立110周年技術ロードマップ小委員会の努力の賜物である。各位に対し謝意を表する。また、後続の部門が計画しているロードマップの作成にも大きな期待が寄せられた。今後、経済産業省のロードマップ策定にも協力しながら、本会のロードマップのブラッシュアップを重ねていく必要がある。 |