スーパーサイエンスハイスクール(略称SSH)をご存知の方は、どれ位おられるだろうか。文部科学省は、平成14年度から、科学技術・理科、数学教育を重点的に行う高等学校を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、理数系教育に関する教育課程の改善に資する研究開発を行っている。
毎年8月上旬には、東京有明の東京ビッグサイトにおいて、文部科学省及び独立行政法人科学技術振興機構の主催により、「スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会」が開催されている。研究テーマは物理、化学、地学、生物、数学に大別できるが、液滴の蒸気膜破壊、太陽電池による太陽光発電、二次元風洞を利用した球運動の解析、円筒グライダーの飛行原理、ドミノの運動、先端ロボット、センサーとリンク機構を用いた階段を上る歩行ロボット、音波による気柱内振動、直流リニアモーターカーの走行など機械工学分野に関係した研究も数多く取り上げられていて、高校生の研究活動の中に機械工学が関連した内容が含まれていることを感じさせる。
さて、小生は、理数教育の重視が叫ばれて各県に理数科なる学科が設置されたときの一期生で、昨年、母校が、SSH対象高に選ばれて以来、運営指導委員なるものを仰せつかっている。委員の活動を通じて、高校側の指導体制やインフラ整備の現状、最近の高校生の学習振りなどを垣間見る機会を得た。この体験は自分にとっては、越し方行く末を見る思いで、自分が過ごした高度成長期に必要とされた資質、現在の成熟社会で必要とされる資質、高校生が目指すであろう高度職業人に必要とされる資質について考えるよい機会となっている。
ここで、SSH活動の現状について少し紹介しておきたい。まず、高校側では、SSHの指定を受けている間に、大学や地域研究機関等との連携を図りながら理数系教育を充実し,生徒の創造性・独創性を高めるための効果的な指導方法,評価方法及びカリキュラムの研究開発に取り組んでいる。数学、理科担当の先生方は、FD活動も行いながら、生徒の自由研究課題の指導や夏休みを利用した見学、各種コンテストへの参加、地域のサイエンス行事への参加など生徒に体験を積ませる場をセットするために多くの時間を使っておられる。生徒にとっては、通常の高校の授業では出来ない体験を通じて、知識を吸収するだけでなく、プロセス重視の体験を積む機会となっている。しかしながら、生徒の側から見れば、3年間の限られた短い期間の間に、通常のカリキュラム、課外活動、学校行事、SSH特別授業があり、いささか盛りだくさんである。また高校時代は、大学受験を控え、自分自身の将来の進路を決めるという重要な人生の選択の時期でもある。このような条件下で自由研究課題に取り組むのはかなりのロードであることが容易に想像される。特に、モノづくりのノウハウの乏しい学校では、生徒にテーマを考えさせることや実験装置を設計、製作させることは困難な状況が存在する。
そこで、小生が思い立ったのが学会との連携である。既に、化学系学会では、化学だいすきクラブや全国高校化学グランプリを通じて、学会と高校教育との連携が行なわれている。また、物理系学会でも高校生向け公開講座が開講されていて、特に世界物理年の今年は、仁科芳雄博士の出身地である岡山で全国物理コンテストが開かれている。
翻って見るに、わが機械学会では、ジュニア会友という制度はあるものの、高校生をひきつける企画がほとんど見当たらない。また、高校生を指導されている先生方の相談窓口も見受けられない。残念なことである。時代を担う高校生に機械工学の魅力や楽しみ方を伝える仕掛けを考えたいものである。
《関連ホームページ》
スーパーサイエンスハイスクール:http://www.mext.go.jp/a_menu/kagaku/daisuki/04070904.htm
化学だいすきクラブ:http://www.csj.jp/kagaku-daisuki/index.html
全国高校化学グランプリ:http://gp.csj.jp/index.html
夢化学21:http://www.kagaku21.net/
物理チャレンジ2005:http://wwwsoc.nii.ac.jp/pesj/2004doc/phys_challenge2005_01.htm
|