森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。

 

自動車業界は「CASE(コネクティッド・自動化・シェアリング・電動化)」や「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」の進展、中国メーカーの台頭など、大きな変革期にあります。

クルマの技術も進化し、車載インフォテインメント(In-Vehicle Infotainment、IVI)が統合コックピットとなり、ディスプレイを活用した高機能な情報提供が可能になっています。


パナソニック オートモーティブシステムズ松本工場で製造されているIVIの内機

ソフトウェアが主役となりつつある流れの中でも、ハードウェアの重要性は変わりません。パナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)の松本工場は、IVIを中心に多品種少量生産に対応する先進的な生産体制を構築しています。

今ではニーズが多様化しているため、一つの車種に対して10〜20種類のIVIが用意されるようになっています。松本工場では約700品番を扱っていますが、100台以下しか作らない機種が7割を占めています。生産ラインでは月に3,000回以上の機種切り替えが発生しています。これがいまの「多品種少量生産」の現状です。こうした環境の中でも、松本工場は高い生産効率を維持し、世界トップレベルのシェアを誇るIVIを提供し続けています。

松本工場では、製造リードタイムや生産性などのデータをリアルタイムで可視化し、ボトルネックを特定することで生産の最適化を進めています。つまり、どこで何がいつどうなったかということを細かく記録するのです。

さらに顧客との情報共有を強化し需要変動に迅速に対応しながら在庫を削減し、ジャストインタイムでの供給を実現するように変えました。

工場のなかでは効率化のためにAGV(無人搬送車)を導入し、部品の搬送を自動化しました。21台のAGVが使われています。さらに、設計と製造工程を同時並行で進める「コンカレントシームレス開発」により、試作段階からシミュレーションで製造工程を最適化し、無駄を削減しています。


部品を搬送するAGV

基板の組み立て工程ではロボットがビス留めや確認作業を担当し、一部の難しいはめこみ作業は人が行うことで、多品種少量生産に柔軟に対応しています。人とロボットの協働です。


基板実装機


ロボットによる内機組み立て工程

工場長の粟澤氏は、最も重要な変革は「チャレンジする意識改革」だと述べました。小規模な改善活動を積み重ねることで、生産効率を向上させてきました。松本工場は、厳しい市場環境の中でも変革を続け、柔軟かつ効率的な生産システムを確立し、さらなる進化を目指しています。


パナソニック オートモーティブシステムズ 松本工場 工場長
粟澤 学 氏

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