森山 和道

本記事は日本機械学会連載「AI/Robot/IoT で変わる製造現場」のジュニア版です。


第32回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)

ロボットで効率アップ、工程をまとめる新技術

2024年11月、東京ビッグサイトで開催された日本国際工作機械見本市(JIMTOF2024)には、最新の工作技術が集まりました。工作機械、つまり機械の部品を作るための機材を使って、さまざまな材料を加工するための技術です。人手不足や環境への配慮が求められる中、多品種少量生産が進む現代の製造業に対応するための新しい取り組みが目立ちました。

加工機に材料をセットしたり取り出したりする作業にロボットを使う技術は、より実践的になってきました。複雑な形を加工できる6軸ロボットも注目されています。加工精度は専用機には劣るものの、大型部品の加工や人手不足対策には効果的です。特に、手作業で行われていた「バリ取り」作業をロボットで自動化したいという声が多く聞かれました。

製造の効率化には「工程集約」が重要です。複数の作業を一台でこなせる機械や、今までは一つ一つバラバラだった部品を一体化して作る「ギガキャスト」のような技術に注目が集まっています。生産効率の向上だけでなく、車の軽量化や強度向上にもつながります。同時にこれまでのものづくりの常識が変わりつつあることを示しています。


DMG MORIブース。ロボットを使った加工機へのワーク脱着作業

ファナックは大型ロボット「M-1000」を使ったギガキャストへの離型剤スプレーのデモを実施。
広い動作範囲とコンパクトな設置面積を両立

 

環境への配慮も必須に

製造業では脱炭素が重要な課題です。工作機械も、電力を無駄に使わない設計やCO2削減の見える化が進んでいます。例えば、どれだけ効率よくエネルギーを使えるかを具体的な数値で示すことが求められています。


三菱マテリアルによるカーボンニュートラルに向けた提案。
切削条件を入力すると温室効果ガス排出量を自動産出

 

デジタル技術で「失敗をなくす」

加工の段取りや設計をシミュレーションする「デジタルツイン」も進化しています。材料や工作機械の特性まで精密にデジタルで再現することにより、加工前に問題を発見でき、失敗を減らせます。また、加工中の機械の動きをリアルタイムで調整する技術も普及しつつあります。これにより、熟練者でなくても高品質な加工ができるようになりつつあります。

生成AIを活用したトラブル対応システムも注目されました。例えば、工場内のデータをAIに読み込ませて問題解決の方法を提案する仕組みです。これにより、ベテランがいなくてもスムーズに対応できるようになります。


オークマによる熱変位制御技術「サーモフレンドリーコンセプト」の効果を示す展示。
「温度変化を受け入れる」というコンセプトで、夜間に電源を切って翌朝暖機運転なしで加工しても高精度な加工が可能

 

未来の人材育成

会場では、学生たちが工作機械や周辺技術を学ぶための展示やセミナーも行われました。工作機械は、すべての産業の基盤となる重要な存在です。新技術を実践に活かせる人材の育成が、未来の製造業を支えます。JIMTOF2024は、最新技術の展示だけでなく、ものづくりの未来を考える場でもありました。効率化や環境対策、人材育成といった多くの課題が、これからも「ものづくり」をさらに進化させていくでしょう。


EV車の新たな一次請けとなることを狙うTHKが独自開発したテスト車両「LSR-04」。
データ取得に用いられている。

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