4 .研究&研究室紹介




(1)愛知県心身障害者コロニー・発達障害研究所
   治療学部・臨床運動学研究室
   研究員・渡壁 誠

  〒480-0392  愛知県春日井市神屋町
  Tel.00568-88-0811 Ext.3550
  e-mail watakabe@inst-hsc.pref.aichi.jp

 私達の体は使わないことによって徐々に衰えて行きます。運動不足による筋力の低下、持久力の低下などは日常経験することです。身体障害者にとって、この問題はもっと切実なものです。例えば,下肢麻痺によって歩行困難になった場合、歩かないことで持久力が低下し、疲れやすく、ますます運動から遠ざかってしまいます。その結果、筋肉は衰え、関節の動きも悪くなり体を動かすことさえ困難になり、最終的には寝たきりになってしまうのです。このような事態を避けるためには,適切なリハビリテーションが必要です。そのためには身体機能の定量的な評価が必要不可欠となります。私達の研究室では機械、電気、電子工学出身のエンジニアと生理学者,医師が共同で身体機能の計測とその分析方法の確立のために研究を進めています。これまでに、循環調節機能の低下や関節可動域の減少などについて多くの研究成果が得られています。また、近年は筋機能の分析を主題とした研究が進められております。

(前列左から二人目)



(2)筑波大学・構造工学系・助教授・石黒 博
   生体熱工学研究室

  〒305-8573茨城県つくば市天王台1-1-1
  Tel 0298-53-5267
  e-mail ishiguro@kz.tsukuba.ac.jp

「熱工学の出身者が、バイオの問題に取り組んでいます。」

 生体に関わる熱工学領域の重要性と将来性を認識し、その分野の研究に一歩を踏み出して以来、早、?年が過ぎました。その間、多大なご助力や励ましに勇気づけられてきました。我々の研究室では、1)生体の凍結、2)生体組織内への物質の浸透、3)組織のレーザーアブレーションなど、生体熱工学・生体伝熱工学の研究を行っています。1)が中心的な課題で、生体(組織工学の産物や食品も含む)の凍結保存や凍結手術を目標とし、細胞や組織などの生体材料が凍結を経験する過程での微視的挙動、凍結・融解後の組織の変化や細胞の生存性などについて調べています。その際、強力な武器の一つが、写真中にある共焦点レーザー走査顕微鏡システムで、実時間・三次元計測ができる優れものです。2)では、凍結保存を成功させるために用いられる、凍結保護物質と呼ばれる「魔法の薬」が組織内へ浸透する過程をMRI(核磁気共鳴撮像法)で捉えようとしています。また、3)では、高分子材料に対して実験を行っています。

 未だ、若い?、未熟者ですが、今後共、ご指導の程、お願い申し上げます。最後に、材料力学の先生方に、熱処理を経たSoft Tissuesにも興味を持っていただければ幸いです。

 (左から五人目)



(3)室蘭工業大学・機械システム工学科・材料力学研究室
   助教授・小林秀敏

  〒050-8585 室蘭市水元町27-1
  Tel 0143-46-5323
  e-mail kobayasi@muroran-it.ac.jp

「植物の展開構造に関する生物規範工学的研究」

 数年前から、桜やプラタナスなど、木の葉の構造に関する観察を始めており、植物の構造について興味を持っていたのですが、2年前にたまたま英国 Reading 大学のVincent 先生のBiomimetics 研究室に行かせて頂く機会を得て、その頃から、表題の展開構造にスポットをあて研究しております。木の葉が小さな蕾から展開して大きな葉に成長して行く過程で、「成長」という要素が主要な部分を占めていますが、イヌシデやブナ等の樹々の葉は、蕾の中で比較的規則正しく波板状に折畳まれた構造をしており、芽吹きの直後は、主にこの折畳み構造が展開し平らな葉になります。また、モミジのような葉は扇のような展開形態を示しますし、桜や菩提樹の葉は、二枚貝のような単純な展開構造をしています。このような自然界にあるいろいろな展開構造に着目し、折畳み構造を数値モデルに置き換え、展開過程をシミュレーションすることにより、その折畳み展開構造の持つ工学的特性について明らかにしたいと思っております。そして、この結果を、人工的な新しい展開構造の創造や設計に応用できればと考えて研究しています。

イネシダの展開途中の波板状の葉



(4)山梨大学・工学部・機械システム工学科
    助教授・ 水口義久

  〒400-8511 甲府市武田4-3-11
  Tel & Fax 0552-20-8574
  e-mail minakuti@ccn.yamanashi.ac.jp

「超音波の医学への応用」

 私のバイオメカニクス研究は、10年前に新潟大学工学部の原利昭教授からご紹介頂いた山梨医科大学整形外科の井手隆俊先生と一緒に、工業用超音波探傷技術を用いて人工股関節ステムと大腿骨との間に生ずるゆるみの早期診断技術への応用から始まった。ゆるみの検出精度はX線診断では約3mmといわれているが、これまでに超音波診断では約0.3mm のゆるみを把握可能であることを明らかにしてきた。またこの研究を通して、これまで不明瞭であった骨内部の断面形状を正確に測定できることも明らかしてきた。更に、従来ではX線透視による被爆が大きな社会問題となっていた大腿骨骨折の骨接合術に対して、工業用超音波探傷技術を骨内部に挿入された髄内釘横止め穴の検出に適用し、スクリューねじを横止め穴に容易に刺入できる骨接合技術を確立してきた。現在では、踵骨中の音速による簡易的骨粗鬆症診断、骨折部の治癒過程の診断、生体内部の骨断層診断などへの超音波技術の応用研究に取り組んでいる。将来は非接触超音波法による生体計測技術を確立し、できるだけX線を使わずに医療診断ができる社会にしていきたい.これが私の夢である。

 ( 超音波によるゆるみ診断装置)



(5)株式会社 アイシン・コスモス研究所
   バイオ・メディカル分野 塚原 金二

  〒448-8650愛知県刈谷市八軒町5−50
  Tel 0566-24-9062、Fax 0566-24-9045
  e-mail ktuka@ai-c.aisin.co.jp

 重篤な心臓病患者の救命手段として、心臓移植、補助人工心臓そして人工心臓などがありますが、私たちは、国立循環器病センター、東京理科大などと共同で*完全埋込型人工心臓の研究開発を行っています。私たちの開発している人工心臓システムは駆動部を空間的に余裕のある腹部に、空間の限られた胸部には血液ポンプのみを配置することにより日本人のような小柄な患者にも適応可能です。人工心臓システムは、摩擦ポンプ、左右2つの血液ポンプ、これらを制御する制御ユニット、体外からエネルギーを供給するエネルギー伝送システム、体外と情報交換を行うための情報伝送システムおよび体内2次電池で構成しています。今後の課題として、システム各構成要素の効率化、小型化の推進がありますが、より理想の姿に近づけるよう日夜努力を続けております。

 なお、写真中央に写っているモデルは、開発中の人工心臓モデルを透明のマネキンに組み込んだものであります。最終製品は患者がこの様に通常レベルの人並みに屋外に動き回れるようにしたいと考えています。

 *本開発は、医療福祉機器研究開発制度の一環として新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託により実施しています。

(前列右から二人目)



(6)久留米工業大学・機械工学科
    教授・田川善彦
   電子機械研究室

  〒830-0052 久留米市上津町2228
  Tel 0942-22-2345  
  e-mail tagawa@c.c.kurume.it.ac.jp

「生体機能の力学的解析と再建」

  昭和50年からヒトの二足歩行のモデル解析を始めて以来、生体力学や福祉工学と関わりを持つことになった。正常歩行のモデル解析、車いすの音声制御、点字情報処理システム開発などが当初10年の研究テーマであり、その後、ヒトの異常歩行時の補償動作とその軽減策のモデル解析を試みた。さらに工学と医学の両分野に亘る学際的な生体力学の研究を推進するために、6年程前から久留米大学の医学部・リハセンターとの共同研究を開始した(久留米バイオメカニクス・リハビリテーション研究会発足)。異常歩行の解析と評価、足部接地時の衝撃力解析、歩行補助具(装具や杖)の動的評価と開発、人工関節の応力解析、最近では喪失機能の再建を目指した機能的電気刺激とその刺激深度の評価、高齢者在宅リハ・ネットワーク構築、運動療法時の関節負荷評価などのテーマについて共同研究を行っている。現在、先の研究会に関連する臨床医、PT、OT、 企業からの参加者は20名以上に上り、その多くが毎週夜間の勉強会で「QOLの向上」を目指し頑張っている。また対外的な月例研究会を開き、近隣の関連分野の人との交流も行っている。



(7)お茶の水女子大学・生活科学部・生活工学講座
     衣住環境評価学研究室
    助教授・田辺 新一

    〒112-0012 文京区大塚2-1-1
  Tel 03-5978-5848、5746  
  e-mail tanabe@comfort.eng.ocha.ac.jp

  私の研究室では、住宅や衣服の快適性に関する研究を行っています。研究内容は、機械学会の皆様からすると大変ソフトに感じられると思います。生産者視点とは異なる、生活者からのパースペクティブを持っています。

  現在、博士課程2名、修士課程8名、卒論生6名の研究室です。女子大なので、もちろん学生は、女性だけですが、民間等共同研究員として2名の男性と私が在籍しています。私が建築環境のバックグラウンドをもっているため、建築に関する研究が多いのですが、生活科学的なオリジナリティーを出せるように努力しています。学生は、家政学部、生活科学部出身です。

  これまで、温熱環境に関する研究が主でしたが、ここ2〜3年は室内空気質、すなわち、シックハウス問題に関しても力をいれて研究を行っています。これに関しては、科学技術庁より3年間の大型プロジェクトもいただき、意欲的に取り組んでいます。

  研究室の、ホームページを是非訪問してください。

最近の研究テーマ



All Rights Reserved, Copyright (C) 1999, The Japan Society of Mechanical Engineers. Bioengineering Division

目次へ