細菌は数μmの単細胞であるが,らせん形のべん毛を回転させ,誘因物質に接近し,忌避物質から逃れる運動を行う(走化性)など,生物としての基本的機能を備えている.べん毛の回転機構はべん毛モーターと呼ばれるユニークな分子機械であり,様々な観点から研究が行われている.我々は,平成4年以来,マイクロマシンに関連するテーマとして,回転するべん毛による細菌の運動を,流体力学に基づいて解析してきた.また,昨年度から,生物工学の設備一式を導入し,単毛性細菌であるビブリオ菌を培養し,生物顕微鏡による観察を行い,解析と観察結果を比較している.今後,細菌の方向転換に関する研究を予定している.細菌の行動の全体的理解を通じて,バイオミメティックスや人工生命(Alife)に向けて,研究を進展させたい.