第75期に続いて今期、第76期も技術委員会委員長をお受けすることになりましたが、前年度の技術委員会委員長としての職責を十分果たしていないことを考えると気の重いところであります。特に、従来ならば講習会・研究会、見学会等を開催するはずでしたが、昨今の経済状況と同様、この種のイベント数を絞ること、経費節減および参加者数を増やす観点から、バイオサロンのみの実施となりました。そのため、第75期通常総会講演会が東京工業大学で開催される機会を利用して総会開始前日である3月31日に同大学工学部会議室でバイオサロンを開催致しました。最初は数人と誠に寂しく、不安な思いを致しましたがその後会場は一時的ではありますがかなり席が埋められました。奈良時代以来の香木のはなし、車室内の快適性に関する関係者自らが語る本音と真実、米国の医療事情から予想される今後の日本における高齢社会、藻類による地球環境問題の解決等、実に興味深い話題が提供され、講演者との質疑応答も極めて和やかな雰囲気の中に心ゆくまで行われた。演者の皆様に心から感謝を申し上げる次第です。
さて、大会実行委員と技術委員会が中心となって企画致しました第75期通常総会講演会での付帯行事、フォ−ラム2件とワ−クショップ2件はいずれも通常より多くの参加者を得ることが出来ました。今回、この種の企画とその内容に対する評価資料を得る一環としてフォ−ラムとワ−クショップそれぞれの開始時と終了時における参加者数の平均値(以下、参加者数)を調べたところ、フォ−ラム3「新しい産業・技術とバイオエンジニアリング」の参加者数43、フォ−ラム4「21世紀期待のバイオエンジニアリング」の参加者数49、ワ−クショップ4「生体に関わる先端測定技術」の参加者数41、ワ−クショップ5「人と生物に関わる先端科学技術」の参加者数31であった。特に、ワ−クショップ5は学会最終日の朝一番という参加人数が得難い条件にも拘わらず参加者数31を得たことおよび登録者数の多い他部門のフォ−ラム・ワ−クショップに対して参加者数において決して引けを取らなかったことはバイオエンジニアリング部門にとってはほっとするニュ−スの一つと思われる。他のバイオ関連のセッションでも同様に参加者数を調べたが、早朝と午後の遅い時間帯を除けば中バイオメカニクス会議(The Fifth Japan-USA-Singapore-China Conference on Biomechanics)および現行様式最後の全国大会と大きな大会・講演会が立て続けに開催され、平成10年度はバイオエンジニアリングの研究者にとっては大変素晴らしい年である。その一方で、当部門では「リフレッシュ・アラカルト教育」事業に関わる業務が予定されている。決定事項ではないが、前年度、日本機械学会の保有する人材・カリキュラム等の技術教育資産を広く社会に公開し、提供することにより特定公益法人としての任務を果たすことを目的とした「リフレッシュ・アラカルト教育」事業が提案されています。この事業の目的は次の二つである。@先端・最新の技術について、JSMEの主催する教育に参加出来ない技術者に受講の機会を与える。A技術教育を企画・実施している団体・企業に対し、教育内容の充実を図るべく、JSMEの多様な教育カリキュラムを提供する。この概要を箇条書きにすると以下の通りである。
@各部門から提供された講座(既に実施分+新規分)に基づきデ−タベ−スを作成する。
Aデ−タベ−スをパンフレットやJSMEのホ−ムペ−ジで公開する。
B技術教育の企画者は講座を選択し、JSME事務局に講師との調整を依頼する。
C企画者は受講者、会場、テキスト等を手配し、講師は会場へ出向いて講義を行う
また、本事業の特徴は以下の通りである。
1.受講者に対するリフレッシュ教育である。
平成8年3月文部省高等教育局発行の「創造的人材育成のために」では、リフレッシュ教育の推進と題し、「技術革新の進展により、職業人が生涯にわたって創造性を発揮するためには、大学院などの高等教育機関において最新且つ高度の知識・技術を修得すること(リフレッシュ教育)がますます重要になっている。」としている。従って、JSMEの会員講師による教育は、まさにリフレッシュ教育であり、時代の要請に叶うものである。
2.技術教育企画者に対するアラカルト教育である。
企画者は、JSMEの提供する講座を選択する。従って、
(1)幾つかの講座を組み合わせ、お好みの教育を企画できる。
(2)企画が手持ちの講座では不足する場合、JSMEが提供する講座で補うことにより、内容を充実することが可能となる。
3.講師の「出前」講座である。
企画、会場準備、受講生募集、テキスト印刷等、事務手続きは全て企画側が行い、講師は会場に出向いて講義を行う。
上記事業に関し、本年2月、提供講座仮登録の依頼が前部門長に緊急になされたため、部門長と相談の上実施するしないは後で決定することにしてバイオサロン、バイオエンジニアリング技術講習会・見学会、バイオエンジニアリング移動講座の3件をとにかく仮登録候補として申請した。なお、仮登録の選出対象講座として、過去5年間に実施した講習・講演、過去人気を博したり面白いと評価された講演等、今後予定あるいは実施可能と思われる講演等が提示されたため、上記の3つを考慮した次第である。今後、この事業がどの様に推移するのか現時点では不明であるが、ゴ−サインが出ることも想定して事前検討が必要と思われる。
技術委員会委員長 原 利昭