「業績賞を受賞して」


名古屋工業大学    

大学院工学研究科・教授

       山口隆美







 このたびは、バイオエンジニアリング部門業績賞をいただきありがとうございます。私のようなものに賞を頂くということは、頑張ってちゃんとした業績を出すようにというお叱りを受けたものと心得、賞に恥じない業績を出すべく精進いたしますのでご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。ふりかえってみますと、臨床医学の世界から右も左もわからない工学の世界にはまり込み、ついに機械学会から賞をいたくだことになろうとは夢にもおもいませんでした。

 さて、受賞したそばからで恐縮ですが、私、昨年9月に現在の職に移りまして、本格的な機械工学者の中で日々暮らすようになりました。機械工学というのは他の工学諸分科に比べて、非常に長い歴史と伝統があり、また、私が奉職することになりました大学も非常に古い歴史をもっていることも手伝って、その体質の古さには始終驚いております。あまり具体的な例を挙げると差し障りがありますが、運営、人事、教育、すべてにわたって旧来の慣習と先例を墨守し、あと3年で21世紀を迎えようというのに、機械工学科の中だけは、あたかも19世紀が終わっていないかのようです。日本機械学会も、この2年間、運営組織の末端に列ねさせていただいて、いろいろ驚くことが多いと感じてきましたが、その源は機械工学科にあったのだと納得がいきました。では、どうすれば良いかということですが、難しいことではあっても、今日我が国全体が迫られている市場開放、情報開示(ディスクロージャ)につきるのではないでしょうか。詳しくは、機会がありましたら意見を述べさせていただきますが、世上を騒がす金融危機、官僚の腐敗と機械工学の硬直化は同根のように思えます。受賞の弁にふさわしくない物言いで失礼いたしましたが、全く異質の分野から入れていただいた者として、余計なお世話かも知れませんが、多少でもお役にたつように努めさせていただく覚悟ですのでよろしくお願い申し上げます。


All Rights Reserved, Copyright (C) 1998, The Japan Society of Mechanical Engineers. Bioengineering Division

目次へ