3.1 第10回バイオエンジニアリング部門講演会を終えて

広島大学工学部   

実行委員長 蔦 紀夫

【はじめに】

 第10回BE講演会は平成10年1月23,24,25の3日間共に大雪の中,東広島市の広島大学・大学会館で,講演件数,340件,参加者約500人を集めて行われました.

 講演会は,大学会館内の5つの講演室と,1つの大講演室に別れて行われ,特別講演1件とフォーラム2件,は大講演室で,また,基調講演16件を含む一般講演約300件は5室の各講演室に別れて行われました.

 講演会の概要を総括すると以下のようになります.

【講演会の準備について】

 ご承知のように,機械学会BE部門の中でも中四国地区は,構成員の数において,バイオ銀座の関東・関西にははるかに及ばない,全国8地区中でも少数メンバーの地区に属します.このため,部門長の大場先生に2年前の平成8年8月に実行委員長のご指名を頂いた瞬間から,この点を如何に克服して人並みの講演規模の行事を企画できるかが焦点となりました.

 まず,過去これまでに行われた2年毎のBEシンポジウムとBEコンファレンスの講演規模と行事内容を調べました.

次に,ME学会の毎年の春期全国大会の講演規模と行事内容を比較して,目標とする行事規模と,両学会の行事内容の比較から,比較的機械学会として新しいテーマ分野も含めた講演企画案をまず作成しました.

 次に全国8地区の主要大学の機関を網羅する形でアクティビティの高そうな先生方をピックして,医系,工系の先生方をペアでオーガナイザの依頼を行いました.学会創立百周年というキーワードを使わせて頂いたこともあって,学内外を含めた多くの先生方から暖かいご協力の回答を頂きました.H9/3の(機)通常総会の部門運営委員会の席で,この承諾を頂き,約70のオーガナイズドサブセッション毎に4〜5件の講演者集めをお願いすると共に,E系,M系の主要会員にダイレクトメールを差し上げて,応募依頼をお願いしました結果,冒頭に述べたような規模で多くの講演応募を頂けることになりました.

【講演行事の内容について】

 今回行われた一連の講演発表内容の傾向をラフですが概括しますと次の通りです.

(1)バイオミメティクスやバイオマイクロマシン等の生物系模倣機械力学分野の講演が40件以上の規模でありました.生物知能模倣,飛翔現象のモデリング,屈曲・運動生物と推進機構,べん毛運動やバイオマイクロシステム,マイクロフライト,水棲生物と自律運動等の多くの分野について発表が行われ,講演室も満席で,今後のバイオ部門の一つの発展分野を形成していく予感がありました.

(2)医学系の先生方を中心にオーガナイザをお願いして,心機能と循環系,消化管系と代謝動態,呼吸器系と肺循環系,人工臓器と人工循環,微小循環生理と物質交換など,これまで(機)BE部門でやや手薄な分野について現状の研究動向が把握できる60件以上の基調講演と多くの研究発表を頂きました.

(3)ミクロ計測技術の研究の進展に伴って,光CT,MRI,超音波等の医用ミクロ計測技術が発展し,画像処理,センシング,診断・診療支援システムへの応用など多くの分野で約50件にわたる講演発表が行われました.

(4)高齢化社会の到来を反映して福祉工学分野や整形外科と機能代行,人工関節,リハビリテーション,高齢者・身障者支援システム等の分野について40件以上の講演発表が行われました.

(5)これらに加えて,これまでバイオ部門の主流を成した生体軟組織,硬組織の物性と力学,生体力学応用に関する研究や,循環系を中心とした流れ解析や計測などについて従来通りの多くの講演発表が行われました.

【招待講演と一般行事について】

 特別講演として広島大学松浦雄一郎教授・付属病院長,現医学部長の約30年にわたる医療現場の体験を踏まえた人工臓器の開発・研究の状況と今後の展望に関するお話がありました.講演会の第一日目が週末の金曜日のため,夕刻の人の集まり易い時に21世紀にかけて今後の発展が期待されるTissue Engnineerig分野のイブニングフォーラムを企画しました.融合研の立石哲也先生を座長として,MITの水野先生やU.K.スミス&ネヒューのDr.Robert,京大(工)筏教授,再生工学のオーソリティ広大(理)吉里教授などこの分野で日本を代表する先生方から,先端的研究動向をお話し頂き,約200人の大講演室は超満員にふくれました.

 第2日目午後には,クローン技術について,この分野のリーダーのお一人,広島大学(医)井手利憲教授の司会で,動物,植物及びヒトのそれぞれの分野からクローン技術の現状と動向についてのお話を頂きました.

 第2日目夕刻には隣接の国民年金保養センター東広島で,恒例の部門長表彰に続いて懇親会を開催しました.あいにくの降り続く大雪の中でしたが約100人の先生方のご来席を得ました.早大土屋喜一教授のご挨拶にはじまって,医系,工系の各先生方の間でにぎやかな交流の輪を広げることができました.

【あとがき】

 遠くは北海道から九州まで,3日間の大雪にも拘わらず,講演行事にご参加頂き,講演会を盛り上げていただきましたBE部門構成員の先生方をはじめ,多くのご協力を賜りました医(歯)系学会の先生方にこの場をお借りして,厚く御礼申し上げます.

 また,この講演会の準備や企画推進に多大なご協力を賜りましたましたました大場部門長,林(紘)特別顧問をはじめ,運営委員会,実行委員会の先生方に心より御礼を申し上げます.本講演会が黒字財政の内に無事終了したことをご報告して終了のご挨拶とさせて頂きます.どうもありがとうございました.



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