部門長 清水優史
東京工業大学大学院
大場さんの後を継ぎ、本年4月から2年間の予定で部門長を仰せつかりました。部門長の役割は、副部門長、幹事、運営委員等と協力しBE部門を内容的、組織的、財政的に発展させることだと認識しています。それゆえ、この役割はきちんと果たして行く覚悟でおります。
これらとは別に、今後の2年間で部門全体で考え、解決に向けた歩を始められたらと思っている問題があります。それは今後我々が直面するであろう大きな社会の変化です。戦後50年科学技術の発展のおかげで我々は物質的に豊かな生活を楽しむことができるようになりました。しかしながらこの文明が多量生産、多量消費型であったため、何時の間にか自然がその影響を吸収できない程多量のエネルギーを使用するようになってしまいました。その結果が温暖化であり、酸性雨であり砂漠化です。もう少し先にはさらに大きな問題が控えています。それは資源の枯渇です。現在我々はエネルギーの殆どを化石燃料に依存しています。この問題はすでに70年代にローマクラブで議論されましたが、現在ではさらにその問題性が明確になってきたと私は考えています。
化石燃料に依存した我々の文明はあと何年持つのでしょうか。消費は今のままと仮定し、これまでに確認された化石燃料の量から後何年これらを使えるか計算すると、石油は45年、天然ガスは60年、石炭は300年です。化石燃料ではありませんがウランも100年です。今後発見される物も含めた推定では、この倍程度が限度であろうと考えられています。しかるに、これらの消費量は増加し続けており、英国の会社の昨年のレポートでは2020年に世界のエネルギー需要は2倍になるであろうと予測しています。
1次エネルギーの80%以上を輸入に頼っている日本は、この問題は一番真剣に考えなければなりません。最初に無くなるのは石油です。通産省は2010年あたりから価格の上昇、2020年あたりから供給の不安定化が起こると予測しており、これに対処するため次世代の火力発電はすべて石炭を原料とするよう指導しています。
ようするに、化石燃料に依存する現在の形の現在の文明は100年程度きり続かない文明なのです。100年は歴史的には短時間です。阪本竜馬が近代日本の夜明けのために走り回っていたのは130年前です。この事実を考えずに、これまでと同じようにがんばることは意味があるのでしょうか。子孫のことを考えると、今の100年文明をせめて千年はもつ、1000年文明に変えなければならないと思います。現在の形のまま100年文明を1000年文明に変えるには、化石燃料の消費を1/5または1/10に減らす必要があります。これをなすためには人々の価値観、習慣、経済、法律など広い領域での変化が不可欠ですが、科学技術においても革新的、独創的な跳躍が要求されるでしょう。
そのときBEの領域はどのような役割を果たせるのでしょうか。若い人達が、夢のある大きな挑戦としてこの問題を捕えてくれたとき大きな未来が開けてくると思います。