6−1.技術委員会報告

 前報でも述べましたように本年は例年になくバイオエンジニアリング関連の大きな学会・会議が本年7月に連続して開催されました.7月15−16日,名古屋大学の田中英一先生がお世話をされたトヨタシンポジウムが名古屋大学シンポジオンで開催され,実に興味深いプレゼンテ−ションが数多く行われました.自動車の安全対策,硬組織の力学特性,スノ−ボ−ドによる死亡事故など幅広い話題が提供され,改めてバイオエンジニアリングが関連する領域の広さを参加者の誰もが実感したシンポジウムでありました.また,このシンポジウムでは発表会場が1室であったことといずれの講演者も極めて解りやすいプレゼンテ−ションに努めたこともあり、参加者に大変好評で両日共に開始から終了まで盛況でした.次いで、7月18−19日に日本機械学会創立100周年を記念した当部門の国際会議が東京国際フォ−ラムを会場として開催され、正しく会議のタイトル「21世紀に向けての展望と発展」に相応しく充実した内容の国際会議でありました。翌7月20日から2日間、同じ会場にて芝浦工業大学の山口隆平先生がお世話をされた第8回バイオエンジニアリング学術講演会・夏期セミナ−・ワ−クショップ「21世紀に夢ある産業」が開催されました。次世代の当部門を担う多くの優秀な学生諸君がはつらつとしてプレゼンテ−ションを行ったのをはじめ、興味のある沢山の研究が披露されました。学生諸君の発表を対象として今回初めてコンペテションが導入され、それぞれのセッションで優秀賞が授与されました。受賞された学生諸氏がこれを機会に更に当部門の講演会や学会等で活躍されることを期待しております。
 技術委員会は、例年ならば、研究会や講習会等を実施するところでありますが、本年は上記のように当部門主催の講演会・セミナ−・学会・国際会議が連続したことや部門の赤字を増やすような企画は絶対に出来ない状況もあって躊躇ってしまった部分が多く部門の皆様にご迷惑をお掛け致しましたことお詫び致します。そこで、平成10年3月30日(月)、日本機械学会通常総会・講演会が開催される前日に、同じ会場の東京工業大学で「バイオエンジニアリングを利用した企業化・製品化技術」をテ−マとするバイオサロンを企画致しました。大手企業の高収益が目立つ一方で、それ以外の企業は景況がかなり悪化しております。このような状況にあっても、バイオエンジニアリング関連の企業化・製品化を行って元気溌剌、前途洋々たる企業の方や現在注目されているバイオ技術・製品化関連の研究者にご参加を頂き面白くて貴重な話題を提供して頂きます。従来、この種の企画は講演会・研究会・セミナ−等で試みられた事もありましたが、時々刻々と変化する高度技術社会にあって次々に生み出される最新の技術や製品は企業の方々だけではなく教育・研究機関に職を持つ人間にとっても極めて興味のある分野であります。このような話題を中心に、それぞれの専門家に分かり易く話題提供をして頂きます。現在のところ、平成10年度の当部門技術委員会が関係する企画予定は特にありませんが、取り敢えず平成10年3月31日からスタ−トする通常総会講演会で当部門が企画致しましたフォ−ラム2件とワ−クショップ2件についてご紹介致します。他部門との活発な交流を意識して多彩な内容となるように心がけました。部門の皆様をはじめ多くの参加者が得られるようにご協力をお願い致します。


バイオエンジニアリング部門企画フォ−ラムとワ−クショップ

【フォ−ラム1】
「新しい産業・技術とバイオエンジニアリング」
話題提供者および題目
1)「食品の凍結保存 −凍結法と保存条件ー」
  高井陸雄 (東京水産大学)
2)「解剖学に基づく衣服のデザイン」
  中沢 愈 (実践女子大学)
3)「植物のダイナミクス」 田中基八郎 (日立機械研)
4)「コンピュータマネキンによる製品・工程設計の試み」
  吉成 哲 (北海道工業試験場)
5)「微生物でPCBを分解」 小穴孝夫 (鉄道総研)

【フォ−ラム2】
「21世紀期待のバイオエンジニアリング」
話題提供者および題目
1)「医療における光造形システムの応用」
  山田眞次郎 (インクス)
2)「蝶の分類 −チュ−リングモデルと形を読む−」
  築山 洋 (築山研究室)
3)「人の流れを考慮した通路形状の最適化」
  森下 信 (横浜国大)
4)「スポ−ツ・レジャ−用品の安全性と設計概念」
  小林 肇 (東京大)
5)「人の情動メカニズム解析」 黒田 勉 (岡山県立大)

【ワ−クショップ1】
「生体に関わる先端測定技術」
話題提供者および題目
1)「筋組織における微小血管内の酸素および pHの動態」
  瀧澤直定 (北里大)
2)「陸上競技におけるフライングの判定」
  横倉三郎 (明星大)
3)「加齢による皮膚の特性変化」  稲垣和正 (資生堂)
4)「筋音を利用した生体計測」
  三田勝己 (愛知心障コロニ−)
5)「骨吸収活動の計測法」 腰原康子 (都老人総研)
6)「MRIを用いた筋活動評価」 志波直人 (久留米大)

【ワ−クショップ2】
「人と生物に関わる先端科学技術」
話題提供者および題目
1)「細菌の運動と特性」 曲山幸生 (農水省食品総研)
2)「生物の水中推進メカニズム」 森川裕久 (信州大)
3)「ヒアルロン酸の医療への応用」水野祥二 (生化学工業)
4)「夜間介護者の睡眠について」 菅田勝也 (東京大)
5)「光トポグラフィによる無浸襲脳機能計測の現状と展望」
  牧  敦 (日立中研)
6)「診断用MRI装置の現状と展望 」
  清水博道 (日立メディコ)

 平成10年8月には、世界バイオメカニクス国際会議(札幌市)と日-米-中-星国際会議(仙台市)が開催される等、全体の流れや当部門の皆様のご意見を十分伺った上でより良い企画をと思っております。

                       技術委員長 原 利昭



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