5.第8回バイオエンジニアリング学術講演会・夏季セミナーを終えて

                         実行委員長  山口 隆平
                            芝浦工業大学工学部
 7月21,22日の2日間,東京国際フォーラムにおいて第8回バイオエンジニアリング学術講演会・夏季セミナーが開催された.開催日の第一日が祝日(海の日)の振替休日と重複していること,7月18,19日に開催されたバイオエンジニアリング部門の国際会議の直後ということもあり,参加者が少ないのではと危惧していた.本講演会が日本機械学会100周年事業の一環として実施され,参加登録が前半および後半に開催された他部門の国内講演会にまたがってカウントされたため,正確な当講演会への参加登録者数は把握できないが,両日とも二つの講演会場とも50名近い方が参加された.とくに,日立製作所の藤江正克氏に企画して頂いた第一日午後に開催されたワークショップ「21世紀における夢ある産業(20世紀”人と物の時代”から21世紀”人と心の時代”へ)」では,人工臓器,福祉機器,ビール,車の乗車感覚や味覚などのバイオエンジニアリング分野を越えた広範囲な講演があり,各講演とも30分の持ち時間を大幅に超過する程の熱演であった.また,本講演会の全てのセッションが大学院生や民間や国公立の各種研究機関に勤務する若手研究者を育成することを目的としたスチューデントコンペティッションを取り入れたため,多くの先生方に審査員になっていただいた.通常の本部門の講演会であれば,講演最終日の最後のセッションの参加者数は極めて少ないのが通例であるが(少々言い過ぎであろうか),本講演会では第2日の最終セッションが終了した後,スチューデントコンペティッションの採点と表彰式を行わざるを得なかったため,講演会が終了するまで多くの審査員となられた先生方と講演者に参加頂けたため,講演会が盛会のうちに終了したような印象を与えることが出来たと思える.
 本講演会の開催状況を述べたが,会議の概況を記すと以下の通りである.特別講演は「整形外科バイオメカニクスの勧め」原利昭(新潟大学)と「コラプシブルチューブ流れの安定性とコロトコフ音」林叡(東北大学)の2件,一般講演39件,ワークショップにおける話題提供講演5件であった.一般講演件数は例年の学術講演会に比べて確かに少ないが,これは本来であれば当講演会で講演されるべき講演が直前に実施された国際会議に流れていったためとも考えられる.
 今回初めて取り入れたスチューデントコンペティッションでは,以下の7項目をそれぞれ5点法で評価し,その総合得点で集計した.公平を期すためにできるだけ多くの先生方に審査員となって頂いた.各セッションとも7名以上の審査員で評価した.
 各セッションから1名の優秀者を選出し,表彰した.
 評価項目:論文構成,発表の構成,スライド・OHP,
      話ぶり,討論,独創将来性,全体
 その結果,以下の7件の研究発表が表彰された.セッション名,研究題目,表彰者を記す.

【セッション名】研究題目、講演者(所属)
【生体硬組織1】椎体海綿骨の構造評価、村松月和(新潟大学)
【生体硬組織2】ラット尾椎の機械的刺激に対する形態モデリングの非侵襲計測、蔵田耕作(九州大学)
【生体軟組織】培養内皮細胞の流れ負荷への適応に関する計算力学シミュレーション、山本康人(東海大学)
【関節】家兎膝蓋腱の横方向の引張特性に及ぼす除荷の影響、山本衛(大阪大学)
【シミュレーション・福祉】不整脈の発生シミュレーション、鈴木盛生(東北大学)
【生物流体1】模擬赤血球の高濃度分散液からなる模擬血液のレオロジー特性、安東卓也(関西大学)
【生物流体2】血流と血管壁変形の相互作用の計算力学的検討、小林拓史(東海大学)

 今回表彰された方はもとより,今回の部門講演会で研究発表された若手研究者が今後益々本部門の発展に寄与していただければ幸いである.



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