3−2.Georgia Institute of Technologyに滞在して

			                         信州大学繊維学部
                                                           小林 俊一
 1996年11月1日から1997年8月31日まで,米国AtlantaにあるGeorgia Institute of Technology (以降,Georgia Tech)のDavid N. Ku 教授の研究室で研究する機会を得ました.Georgia Techは1991年に第3回米中日バイオメカニクス会議が行われたこと,バイオメカニクス関連の研究者も多いことからも御存じの方は多いかと思います.また,1996年夏のアトランタオリンピックの選手村,水泳競技などの会場でもあったので,一度はテレビで見られたことがあるかもしれません.
 Ku 研究室のスタッフは大学院生7人とポスドク1人,外国からの研究者が私を含め3人でした.昨年夏は少数精鋭ということか,大学院生が4人と外国からの研究者1人だったのが,ちょうど私が来た頃に新しい研究の展開として,動脈のリモデリング関連の研究やグラフトの開発を開始したので急に増えたようです.Ku 教授は同じAtlantaにあるEmory大学の外科の教授でもあることから,研究室のスタッフの多くは動物実験やMRIを用いた実験などで頻繁にEmory大学に行きます.
 近年のインターネットの普及による恩恵は海外にいる研究者にとっても非常に大きいと思います.日本からブック型パソコンをもっていきましたので,日本とのE-mailによる連絡は本当に便利でした.また,WWWブラウザで,日本の全国や地方の新聞社のWEBサイトなどをチェックできたので,帰国して浦島太郎になったような感覚はあまりありませんでした(滞在期間が短かかったこともありますが).私はjsmebioという当部門のメーリングリストの管理を行っておりますが,遠隔操作で対処できると思っておりましたところ,7月に起きたトラブルでは適切な対処ができず,参加者の皆様には多大な御迷惑をおかけしてしてしまいました.ここに深くお詫び申し上げます.帰国早々にメーリングリストのプログラムを最新版にしまして,現在,問題なく安定に動作しております.
 さて,私の担当した研究は,粥状動脈硬化症による狭窄における血流と狭窄部変形についてのモデル実験でした.私にとっては新しいテーマであり,初めての海外での研究でもあることから,とても新鮮な気分で取り組めました.また,講議や委員会などの仕事もないので大学院生時代に戻った感じでもありました.当然ながら私の医学の知識は乏しく,例えば生理学的な表現や評価などが分からず最初はとまどいましたが,教授や共同研究者の方達から御教示いただいて何とか続けることができました.その結果の一部は滞在中の6月にWashington, DCで行われた1st International Interdisciplinary Conference on Cardiovascular Medicine, Surgery Science, and Mechanics で発表することができました.今回行った研究を,たまたま米国滞在で行った研究と位置付けることなく,これからも続けていきたいと思っております.


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