九州大学工学部 日垣 秀彦 バイオエンジニアリング部門瀬口賞を賜り,身に余る光栄と感謝いたしておりま す.研究発表の機会を与えて頂きました部門の皆様,御指導下さいました平野冨士夫 名誉教授と山本雄二教授をはじめとする九州トライボロジー懇談会と杉岡洋一九大総 長と梶山千里教授をはじめとする九州大学生体材料・力学研究会の多くの先生方,学 生時代から研究者には程遠いキャラクターの私をバイオメカニクスの世界へお導き下 さいました村上輝夫教授に御礼申し上げます.また,研究のパートナーである九州大 学整形外科の三浦裕正先生,研究に協力いただいている馬渡太郎先生,工学部大学院 の中西義孝氏と蔵田耕作氏に感謝いたします. 私はトライボロジーをバックグラウンドにバイオメカニクスを学び初めて6年目に なります.大学院修士課程では工業材料の摩擦面間における電場印加による不動態膜 形成制御をテーマにしていました.生体内でもその低い酸素分圧から不動態膜の形成 不全による金属材料の疲労現象等が既に報告されており,生体という特殊環境に興味 を持って方向転換してきました.しかし,その後も生体内界面での現象に興味は絞ら れ,生体関節の境界潤滑機構の解明を一貫して行ってきました.最近では,バイオト ライボロジーにおける自身の研究やそのアプリケーションの方向が定まりつつあり, 以前より興味があった他のバイオメカニクスの領域での研究をスタートさせたところ です.私の所属する知能機械工学科では動物実験を行うことが困難で,医学部のアニ マルセンターや解剖学系の顕微鏡設備を利用させていただいています.それらの施設 での各科臨床医との交流では,多くの力学が絡んだ問題が話題にのぼり,個々の症例 に関与するファクターの多さや臨床におけるエンジニアのニーズなど再認識しており ます.これからも課題は増えるいっぽうだと思いますが,一つ一つ関わっていきたい と思っております.今回,このような名誉ある賞を私のようなものが頂き,医学部 キャンパスでの作業に疑問を抱きながらも,馴れぬ動物実験を日夜奮闘している当研 究室学生諸氏にも励みになることと思います.有り難うございました.