東京工業大学名誉教授 豊田工業大学教授 梅谷陽二 日本機械学会のバイオエンジニアリング部門は,技術関係での日本におけるこの種 の研究団体でもっとも権威ある団体であり,今回その権威ある団体から功績賞をいた だき,身の引き締まる思いである. 思えば1970 年(昭和45年),早稲田大学の土屋喜一教授を委員長に生物機械工 学研究会を機械学会の中に作っていただき,約2年間,主にバイオメカニックスの調査 研究を始めたときから勘定して,はや27年が経過した.当時,委員長も若ければ幹 事の私も若く,機械屋で生き物などに興味をもつ変わった輩の集合体であった.その ときのメンバ−の中でひときわ熱心な方が京都大学から参加されており,会合にはほ とんど毎回出席されていた.毎回の出張旅費だけでも大変だろうな,と余計なことま で心配したものであったが,その方がこの部門の設立に深く係られた元部門長の阪大 教授林絃三郎教授である.生物機械工学研究会のメンバ−の多くは,その後,多かれ 少なかれバイオエンジニアリングからそれた方向に向かわれたようであるが,林教授 はもっとも王道を歩まれ,今日の日本におけるバイオエンジニアリング研究を世界の レベルに押し上げた原動力を担っておられる.私如きが,横道に逸れてしまった一人 として申し上げるのは心苦しいが,林教授を始めとして,日本のバイオエンジニアリ ング研究を発展させてこられた歴代部門長ならびに諸先生方のご努力に心から敬意を 表したい.功績賞を頂戴した御礼言上と共に,日本機械学会 バイオエンジニアリング 部門の末永きご発展を御祈り申し上げたい.