新潟大学工学部 原 利昭 この度、バイオエンジニアリング部門の業績賞を頂戴し、身に余る光栄と感 謝申し上げます。小生の受賞に際し、ご尽力を賜りました諸先生方および共同 研究者に心から御礼を申し上げます。正直に申しまして、小生が業績賞を頂戴 するに相応しいかを考えてみますと全く自信がないところでありますが、これ を機会に”もっと頑張れよ!”と皆様から暖かい激励の言葉を頂戴したと曲げ て解釈し、多少気を楽にしているところであります。同時に、決して小生個人 が頂いたのではなくて共同研究者と共に受賞したものと考えていることは言う までもなく、さらに精進努力してバイオエンジニアリングの研究に取り組まな ければと決意を新たにしている次第です。業績賞を頂戴するに当たり、このメッ セ−ジを書くようにお話がありましたが、若輩の身で教訓めいたことは何一つ 書けそうにないので、小生がこれまでバイオエンジニアリングの研究を通して 得たものを中心に書かせて頂きます。 1979年当時、大学院でバイオエンジニアリングの研究を行う環境は何処の大 学でも整っていなかったようである。そのためとも言えないが、博士課程では 三次元弾性論に基づく接触問題の解法を研究した。バイオエンジニアリングを 研究しようと強く意識したのは博士課程修了後に出掛けたカナダのWaterloo大 学であった。小生が所属したのは土木工学科の固体力学部門であったが、すぐ 近くの建物で行われていた運動科学、歩行解析、動物学などの実験風景を見て” やはりこれだ!”と強く意識した次第である。さらに追い打ちを掛けるように、 Western Ontario大学での整形外科バイオメカニクスの素晴らしい研究状況に 接し、感動してしまった。その後、新潟大学に赴任したところ偶然にも良きパ −トナ−である古賀良生先生(現新潟こばり病院)に出会い、強力な御支援を頂 くこととなった。これがきっかけになり、整形外科学教室との全面的な共同研 究が始まった。また、1989〜1990年にミネソタ州ロチェスタ−にあるMayo Clinicの整形外科バイオメカニクス研究室でE.Y.S.,Chao先生の厳しいご教示 とKai-Nan An先生の人間味溢れる手ほどきを受けることが出来たことも現在の 小生にとって大きな財産になっている。しかし、小生にとってバイオエンジニ アリングの研究に従事して最も良かったと思うのは、瀬口靖幸先生、林 紘三 郎先生、阿部博之先生をはじめ数多くの優しくて厳しい諸先生方にお目に掛か れたことである。これらの諸先生方からは実に素晴らしい刺激を与えて頂き、 体型も含めて人間が丸くなった”と周囲から言われるようになった。 さて、小生の研究室では現在、博士課程4名、修士課程12名、4年生5名、 留学生1名、計22名の学生が、ときに1週間の徹夜が続こうとも文句一つ言 わず(小生が暴君のように振る舞っているからでは決してないのだが)バイオメ カニクスの研究に嬉々と(小生がそう思っているだけかもしれないが)して取り 組んでいる。”いまどきの学生”にしては珍しいとか、信じられないとかの評 価を受けるのであるが、彼らの1日は朝11時に始まり、終わりは翌朝3時頃 である。運動不足にならないように毎週金曜日の午後をスポ−ツをして遊ぶ時 間と決めているが、それでも研究発表の準備などでなかなか全員揃うことは少 ない。”いまどきの学生”がこの様な生活に何故耐えられるのかは、実際の患 者に接し、何故この研究を行う必要があるのかを十分理解することにあるよう である。彼らと共に実験に参加し、疲労困憊になった明け方食べる弁当の味は 格別である。気分転換に外へ出れば夜も白みもう小鳥が鳴き始めている。元気 で好きなことが出来る喜びとこの様な環境にいられる幸せに感謝しないわけに はいかない。この度の受賞の喜びを彼らと分かち合うと共にこれからも学生と 一緒になって実験に、測定に、試験片作りに頑張って行きたいと思っている。 併せて、ここでは到底名前を書きれませんが、ご指導ご鞭撻を賜りました多く の諸先生方に、そして自分が出会う全てのことがらに感謝の念を片時も忘れる ことなくバイオメカニクスの教育研究に今後も励んで行くつもりです。最後に、 重ねて御礼を申し上げ、小生のメッセ−ジと致します。