バイオエンジニアリング部門長 松崎 雄嗣 (名古屋大学工学研究科) 昨年度に引き続き、部門長を勤めさせていただきます。皆様方のご協力とご 支援を得て部門活動の一層の活性化を進めてまいりたいと存じます。当部門は 発足以来、10年目に入り、これまでの我が国におけるバイオエンジニエリン グ分野の発展に大きな貢献を果たし、1つの時代を形成して来たと考えられま す。部門のあり方、即ち、通常総会、全国大会への対応や部門講演会開催など については副部長の大場謙吉先生を中心に検討をされており、今後の方向が近 いうちに示されると期待されます。当部門の活性化については、第6回バイオ エンジニアリング学術講演会(平成6年8月5-6日)および第4回バイオメ カニクスカンファレンス(平成7年1月19-20日)の際にパネルディスカッ ションの形で行われ、さらに第7回バイオエンジニアリングシンポジウム(平 成7年7月25-26日)において、”バイオエンジニアリングへの新しい提 言”のパネルディスカッションが行われて、今後の部門の活動は多くの方々の 意見の反映されたものになることと考えられます。 当部門に登録している会員数は1500人に達していますが、講演会、総会 などへの参加者は限られています。そこで、1人でも多くの方々の意見が伝わ り、また相互に意見を交わし、あるいは迅速に部門に関する情報が伝達出来る 様に、本年2月から試験的に部門のメ−リングリスト(E-Mail)を非公式な伝 達手段として開設しました(詳細は学会誌3月号221頁、および部門ニュ−ス No.19、1995年3月発行)。部門運営委員会の議事録をはじめ、各種委員会の 報告などや学会開催の案内なども掲示されます。 現在、学会においては、21世紀における学会の有り方の検討が行われてお ります。所謂[3力]と呼ばれる様な従来からの学問分野の分類に従った部門 と異なり、当部門は比較的新しく、しかも既存の学問分野の分類に従うと横断 的、学際的、総合的であるため、他分野の多くの会員に必ずしも十分理解され ているとは言えません。また、旧来からの多くの分析的な研究分野は、既に成 熟期に達している場合が少なくないと思われます。今日では、特に、従来の効 率と簡便化を目指した工学が、色々な点で破綻をきたしています。次世紀には 人間、自然、人工的な環境などが共生するための機械工学が必要になると考え られ、そのためには総合的視点が不可欠なものとなります。従って、神秘的な までに複雑さを持つ生命現象に係わるバイオエンジニアリングは、機械工学の 中でも今後とも重要な位置を占めると考えられます。多くの本学会会員にバイ オエンジニアリングの特性を広く理解して貰うと共に、我々自身も学術的、あ るいは技術・開発的な面での一層の研鑽を積むことにより、初めて真に次の世 紀を担うフィロソフィーを育て、また、発展する分野に係わる工学者、研究者 としての役割を果たすことが出来ると考えます。