科学技術立国の礎は計測技術にあると言われ,独自の装置開発が科学技術を飛躍的に発展させることも歴史が証明している.熱流体計測では,従来からピトー管,熱線流速計,熱電対などのプローブが利用されてきたが,これらはいずれも1点(0次元)計測であり,場に擾乱を誘起する可能性のある接触形の計測手法であった.計測技術が非接触,多点同時(多次元)計測へと向かう中で,熱流体計測においても0次元・非接触計測であるレーザー流速計が出現し,その後粒子画像流速計(PIV)の開発により,2次元・3次元の速度場が瞬時に,しかも非接触で得られるようになった.また,レーザー誘起蛍光法(LIF)に代表されるレーザーと画像解析を利用した非接触,多次元計測手法も,温度・密度分布の計測手法として気体力学や燃焼の分野で重要なツールとして利用されるに至っている.最近では,感圧塗料(PSP)の開発による固体表面圧力分布の非接触計測法も開発されている.このように熱流体工学分野では,この20年ほどの間に新しい計測法が次々と開発され,計測精度の向上および解析時間の短縮が達成されてきた.
熱流体計測においては,非接触,多点同時(多次元)計測に続いて,計測精度のさらなる向上,複数の物理量や複数の化学種を同時に計測する複合計測手法,マイクロ・ナノ技術に関連した熱流体現象解明のための原子・分子レベルでの計測手法の開発なども緊急の課題である.これらのテーマについて,企業委員とともに,今後緊急に必要な熱流体分野の計測技術を議論し,基礎的な物理・化学に基づいた計測技術の構築を目指すとともに,その実用化に向けて発展させることを目的とする.
上記の目的を達成するために,本研究分科会では流体工学および熱工学分野の先端的計測法について,企業委員による問題提起と研究者委員の研究・開発を実施し産学官の交流を促進する.具体的な活動として,研究分科会を年4回程度開催するとともに,@これまで得られた知見,経験,活動成果をもとに@先端的熱流体計測法の調査・検討,A先端的熱流体計測法に関するノウハウの蓄積,B先端的熱流体計測法に関する研究の深化,C個人レベルでの新規な計測技術の発掘・育成,D新たな熱流体現象の発見やこれまで以上に精緻な実験データが得られるような工学的・工業的にも新規な計測技術の潮流を生み出す,などを実施する計画である.以上の活動により,先端的熱流体計測法の新規開拓およびさらなる深化を図り,産業界でのさらなる展開を目指す.
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