研究分科会へ

RC236


 
1. 分科会名称

 『第10期エンジントライボロジー研究分科会』

2. 主査名  瀧口雅章 (武蔵工業大学 工学部 機械工学科)
3. 設置期間  2008年4月〜2010年3月(2年間)
4. 活動目的・内容

 
目的: 
エンジンの排ガス浄化及び燃費低減が強く求められ、直噴ガソリン、コモンレールディーゼル、ハイブリッド、バイオ燃料、排気後処理等の新技術が続々と開発され実用化されている。しかしその中には、オイル添加剤による触媒被毒、低粘度油による境界潤滑領域の増加、燃料によるオイル希釈、大量EGR化による摩耗増加、高過給・高圧噴射化による熱負荷増加、等々、トライボロジ−上の問題が数多く含まれている。更に最近の石油価格の高騰並びに地球温暖化は、これら新技術の実用化が一層強く求められている。このような状況下において、新技術がその効果を十分に発揮するためには、関連するトライボロジ−問題の解決が不可欠であり、その対応が急務となっている。このような観点から、平成17年に設置されたRC221では、研究者がこれまでに蓄積した解析手法並びに計測手法を、摩擦、摩耗、焼付、オイル消費等のエンジンが直面する現象について集中させることにより、幾つかの改善策を提案し、またマクロからナノオーダまでの幅広い研究結果を連携させることで、個々の現象の基本的な理解を深めてきた。本研究分科会では、RC221で発展させた計測及び解析手法を用いて、今後のエンジン性能に強く求められる燃費、耐久・信頼性、オイル消費の改善に直結する研究を強化、継続することにより、具体的な解決策を提案することを目的とすると共に、新たにバイオ燃料、排気後処理に関連する研究を加えて、幅の広い情報を提案することを目的としている。

内容:
【上期 第1年度(2008年4月〜2009年3月)】

(1) 燃費
・ TiN-MoS2等複合膜の無潤滑下及び潤滑下での摩擦摩耗特性評価の実施。
・ 摩擦試験機による新規エンジン材料に適する潤滑油摩擦調整剤の評価の実施。
・ コンロッド及び主軸受のオイルスターブ潤滑理論の導出。
(2) オイル消費
・ S-トレース法による多気筒エンジンにおける気筒別のオイル消費量測定の実施。
・ シリンダーに付着した油膜の燃焼ガスによる蒸発過程シミュレーションプログラムの開発。
・ 誘導放出現象を用いた油膜厚さ計測法の開発。
(3) 耐久性・信頼性
・ 粗さ突起部の降伏塑性領域の温度及び硬さ変化を考慮した過酷度評価法の検討。
・ ピストンリングの混合潤滑解析により、摺動面バレル形状のリング摩擦特性への影響確認。
・ ピストン摩擦力測定用直噴ガソリンエンジンの製作。
(4) 触媒・後処理
・ Low-SAPS油の実働ディーゼル機関の摩擦摩耗特性への影響を確認。
・ Low-SAPS油のカム・フォロワーの摩擦特性及び、各設計因子の影響を確認。
(5) バイオ燃料
・ バイオ燃料で運転可能なピストン摩擦力測定用ディーゼルエンジンの製作。

【下期 第2年度(2009年4月〜2010年3月)】
(1) 燃費
・ TiN-MoS2等複合膜を実エンジン部品に実施し、その摩擦摩耗特性の改善効果の確認。
・ 省燃費潤滑油の設計指針の提案。
・ 高速度カメラによる軸受の油膜挙動の可視化結果と共に軸受スターブ潤滑理論を構築。
(2)オイル消費
・ オイル消費量の気筒毎の違いについて、ピストン・シリンダ温度、シリンダー形状等より解析。
・ シミュレーションによるシリンダーからの油膜蒸発量予測値とオイル消費測定値の比較検討。
・ 誘導放出現象を用いた油膜厚さ計測法の限界及び精度の確認。
(3) 耐久性・信頼性
・ 粗さ突起部の降伏塑性領域の過酷度と摩耗、焼付の関係の解析。
・ ピストンリングの混合潤滑解析により、摺動面バレル形状による死点近傍の潤滑改善の有効策を提案とその実験的検証。
・ 直噴ガソリンエンジンのピストン摩擦力測定結果より、ピストン潤滑上の問題点と対策の提案。
(4) 触媒・後処理
・ Low-SAPS油の実働ディーゼル機関の摩擦摩耗の改善策の提案。
・ 低粘度の各種Low-SAPS油のカム・フォロワーの摩擦特性及び、各設計因子の影響を確認。
(5) バイオ燃料
・ バイオディーゼル燃料におけるピストン摩擦力及び潤滑状態の確認とその問題点の摘出。

5. 期待される研究成果 
 エンジンの緊急課題である燃費、耐久・信頼性、オイル消費、排気後処理、バイオ燃料に対して、図1に示すようなテーマを設けて研究することにより、以下の成果が期待される。また特筆すべき点は、これらテーマは、RC221で計測及び解析手法の多くは既に蓄積されており、短期間に理論と実験の両面からの成果が得られることである。

(1) ピストン、軸受、カムの摩擦低減に対する、表面処理、オイル等による具体的手法とその効果の情報及び、その基本的なメカニズムの理論的裏付けが得られる。
(2) オイル消費量に占めるシリンダー壁からの蒸発の割合のほか、気筒間のバラツキ、各部温度等、各因子の影響度合いの情報を得られる。
(3) オイル消費低減の具体的手法とその効果及び理論的裏付けが獲られる
(4) 過給、直噴ガソリンエンジン及び、バイオディーゼル燃料のピストン潤滑上の問題点を計測と理論より確認できると共に、その具体的な対策手法の情報が得られる。
(5) 低灰・燐・硫黄オイルのピストン、軸受、カムの潤滑状態及び摩擦特性への影響を確認できると共に、その対策手法の情報が得られる。

図1 RC236で注目する研究課題と実施する研究テーマ

6. 参加負担金  50万円(年間)×2年 
7. 問合せ先

 分科会幹事:南一郎
  岩手大学 工学部 応用化学科
  TEL/FAX:019(621)6335
  E-mail:ichiro@iwate-u.ac.jp



 


Home Page


E-mail:rescom@jsme.or.jp
All Rights Reserved, Copyright (C) 2008, The Japan Society of Mechanical Engineers.