第97期熱工学部門長 東北大学 流体科学研究所 未到エネルギー研究センター 教授 丸田 薫 |
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2019年4月1日 | 2019 年 4 月より第 97 期の熱工学部門長を仰せつかりました,東北大学・流体科学研究所の丸田薫と申します.部門長就任にあたり一言ご挨拶申し上げます. 先日,本会東北支部の講演会に参加した際,10~20 年前に支部長をお勤めになった数名の大先輩の先生方が,現役の会員や学生員に向けてお話をされる機会がありました.異口同音に挙げられたのは日本の人口減少問題とエネルギー問題であり,それぞれが深く印象に残りました.かつては,「日本には国産のエネルギー資源がない.しかし人が資源である」,と言われてきたがその源である人口が減少していること.また問題提起として,「単純に現在の人口減少ペースを外挿すると,今から 150 年後には日本人はゼロになるということ」を考察のための極端な例として挙げられ,このことから目をそらすこと無く,思考停止せずに考え続けることを若い学生諸君に強く説いておられました.さらに,「エネルギー問題を解決する新しい熱機関が日本から産まれることを強く願っている」とも述べられました.私自身は日頃の自らの視野の狭さ,視座の低さを恥じると共に,学生のような気持ちでお話しを伺いました.本会および本熱工学部門が直面する会員数・部門登録者数の今後,熱工学部門の活性化といった直近の諸問題の遙か彼方に見える手強い現実を改めて意識したからです. もう一点,大分スケールは異なりますがアカデミアの会員にとって頭の痛い問題があります.世界の大学ランキングや,より身近な大学評価など,昨今頻繁に取り沙汰される大学の研究力評価指標が,国外の商業データベースに収録される論文や研究発表,それらの被引用等で決まっており,そのほぼ全てが英語による研究成果で評価されていることです.日本の科学技術力の大きな源泉の一つ,母語による論文執筆や研究発表が,こうした評価の際に素通りされることは言うまでも無く大きな損失です.それは「製品」という形で成果を世に問うことができないアカデミアにとっては特に,本当に頭の痛い問題であります.本学会の学術コンテンツのあり方を含め,より抜本的な対策を議論する時が来ています. エネルギー問題に強い関わりのある熱工学部門は,伝熱・熱物性・燃焼分野の研究者・技術者コミュニティを 3 つの核として,我が国,そして世界規模の熱工学に関わる問題の解決に資する必要があります.部門の皆様のお力添えをいただきながら,問題解決に向けてより広い分野の皆様と協働できる体制作り,解決策の創出に向け,一歩でも進んでいけるよう微力ながら努力して参りたいと存じます.一年間どうぞよろしくお願い申し上げます. |