第95期熱工学部門長 北海道大学 大学院工学研究院 機械宇宙工学部門 教授 藤田 修 |
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2017年4月1日 | 2017年4月より第95期部門長を仰せつかりました.部門長就任にあたりご挨拶申し上げます.機械学会熱工学部門は,伝熱,燃焼,熱物性の専門家を中心とする機械学会会員の中の熱に関わる専門家の集団です.この分野で最大の課題を一つ挙げるとするなら,やはり二酸化炭素排出抑制を中心とする温暖化ガス排出抑制への貢献です.2015年11月から12月にパリで開催されたCOP21においては,産業化以前より地球平均気温上昇を2℃に抑える長期目標が全ての国々が参加する世界共通の目標として採択されています.この流れをうけて我が国では2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減することを目指すとしています[1].また,2050年には現状と比べ80%以上の削減が必要とも言われています.これを実現するには,現状の技術の延長上にいるだけでは難しく,何らかのブレークスルーを見いだして行かなくてはなりません.それと同時に,現状の技術やシステムのたゆみない改善も必要となります.機械学会熱工学部門の会員は産業の立場から,また,大学や研究所の立場からこの問題に関わる方も多く,まさにこの問題の当事者と言えます.すなわち,部門としてもこの問題に対し責任感を持って取り組む必要があり,また,部門の活動はこの問題へ大きな影響力を持っているとも言えます.熱に関わる課題は他にも,生体やナノ技術,安全技術,人間の生きる環境での種々の熱マネージメント等,多岐にわたります.熱工学部門の会員が関わる問題は数多く,引き続き大きな活躍が期待されていると言えます. このような中,機械学会として,また,熱工学部門として,果たせる役割は何かを考えて行かなければなりません.学会の本来的な役割としては,(1)学術の発展および普及,(2)人材の育成,(3)交流の場の提供,などが考えられます.(1)については熱工学コンファレンスをはじめとする学術講演会や論文集の刊行などが代表的な活動となりますが,これについては価値のある情報を会員より多数発表していただくことが鍵であり,優れた成果に対する顕彰を含めて,これを後押しする種々の工夫を凝らすことが学会の役割と思います.(2)は若手技術者・研究者を対象とした講習会や学生会員に対する講演機会提供と表彰などが該当します.ここでの課題の一つとして,学術講演会のあり方が挙げられます.近年,学術講演会は学生の発表の場としての機能が強まっており,学生の講演発表に対して教育的配慮を含めた議論となる場合がある一方で,学術の発展という視点からは突き詰めたぎりぎりの議論が必要という側面があります.現状を十分に理解したうえで,(1),(2)の役割を果たしていく手段を考え出して行く必要があると考えます.(3)は学会が,学術の議論を第一とする場であり,直近の利害関係を前提としない企業・大学・国研の交流が可能であるという特徴に由来するものです.学会での交流から,国の次の時代の礎となるようなプロジェクトが生み出されていくような姿が理想と思います.また,同時に,国際的な交流の場を提供し,我が国の研究者が諸外国の研究者と協力関係を築く場としても機能していくことも重要な役割と思います. 本年度の熱工学部門の活動においては,学会が本来的に果たすべきこのような役割の原点に立ち返って部門行事の企画や運営を行って行きたいと考えております.これが結果的に冒頭に述べたような国レベルあるいは世界レベルの課題を解決していく上での力の源泉になるように思います.学会や部門の大きな関心事として会員数の増減がありますが,会員数の増減はあくまでも一つの指標でしかなく,これを増加させること自体が種々の事業の目的ではありません.本来達成すべき目標は別にあり,部門の活動がそこにどれだけ向いているか,ということが結果的に会員数に反映されるものと考えております. 最後になりますが,部門活動の活性化には学会員の皆様のご理解とご協力が不可欠です.会員の皆様には種々のご協力,お願いをさせていただく場面があるかと思いますが,何卒ご支援,ご協力をお願いし部門長の挨拶とさせていただきます. [1] 環境省Website: http://www.env.go.jp/press/102512.html |