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科学教室教材「風力発電機」の科学

中別府 修




明治大学 教授
理工学部機械工学科
onakabep@isc.meiji.ac.jp

1. はじめに

 技術立国を標榜する日本では,理科や科学・技術教育が重要であり,近年,大学や学会,科学館,自治体等で様々な科学教室が催されるようになってきた[1-3].明治大学理工学部においても,1995年より,小・中・高校生を対象とした夏休み科学教室を開催し,教員が知恵を絞って考案したオリジナル教材を使い,科学技術への興味や関心を高める教育活動を行っている.著者はこの活動で,市販の小型直流モーターとLEDが点滅するおもちゃを利用した手作り風力発電機(図1)を考案し,小学校4〜6年生を対象として科学教室を実施した.試行錯誤の末,教材の風力発電機は家庭用扇風機の風でLEDを点滅できるものとなり,参加した生徒の喜ぶ顔を見ることができた.
 全国の科学教室を企画・実施する教員や技術者も,同様に,子供たちへ科学・技術の面白さを伝えることを目的とし,各自の経験やインターネット等の情報から,教室の内容を企画し,教材を製作していると思われる.ここで,手作り教材の構成や仕組みを明確にし,その特性を定量的に評価し,信頼できる情報として発表することは,理科教育活動の促進に貢献すると共に,大学等の高等教育でも活用できる教材とすることができると考えるに至った.
 本稿では,同様の科学教室を実施する場合に参考となり,高等教育にも活用できる教材情報の提供を目的に,考案した風力発電機の詳細と実測した特性を報告するものである.

Fig. 1 Photo of wind power generator for summer science school in Meiji University.

2. 風力発電機教材

 風力発電は,再生可能エネルギーを利用した環境負荷の小さなエネルギー装置として,小中学生の科学への意識や興味を高めるのに適した題材である.また,手製の風車で模型用の小型モーターを回し発電する基本構成は容易に着想される.教材の条件として,1〜2時間で製作可能なこと,発電を実感し興味を引けること,工夫の余地があり「すごい」「楽しい」と感じる要素があること,を考慮して教材を製作した.
 考案した風力発電機(図2)では,厚紙で作った多翼型(アメリカ型)風車の回転をプーリーで2.8倍に増速し,小型DCモーターへ伝えることで発電する.発生した電気は昇圧回路を通り,おもちゃの発光器内のLEDを点滅させる.風車,モーター,昇圧回路,発光器は角材のボディに取り付け,後端に尾翼を取り付けたボディは支柱に回転自由に取り付けられる.風が吹くと,風車は横風のモーメントにより風上を向き,風車の回転に伴いLEDが点滅する.風車の回転数に応じてLEDの発光強度が変化し,風の強さを視覚的に感じられる.部品のねじ止め,電気配線,風車や尾翼の工作を含む作業時間は,小学校高学年の生徒で2時間程度である.表1に使用した部品の仕様,参考市価を示す.
 教材開発過程では,各種の市販小型直流モーターを入手し,大きさの異なる風車を接続し,家庭用扇風機の風でLEDや豆電球が発光する発電量が得られえるか否かを実験的に調べた.結果として,低電圧・小電力で回転するソーラーモーター[4](タミヤ,RF-500TB)が本用途に適していることが分かった.
 また,直径20cmの厚紙円板から作る風車をモーターに直接接続した場合,回転数が低く,得られる電力は,小電力,低電圧であり,電球やLEDを直接点灯させるのは難しいことが問題であった.発電を電圧計等の計測器で確認するのも,教材としてコストがかかり,楽しむ要素も減ってしまう.解決策として,少ない部品点数で構成され,1V以下の直流電圧をLEDが点灯する1.6〜3.5V以上の電圧へ昇圧するブロッキング昇圧回路を採用することで,発電した電力でLEDの点灯が可能なことが分かった.
 発光器は,当初,発振回路によるLEDの点滅を考えたが,ワンコインショップでカラフルにLEDが点滅するおもちゃ(ピカピカ棒,鞄本パール加工)を見つけ,これを利用することとした.さらに,風車の軸受には,当初,鉄板に穴をあけた模型用軸受けを用いていたが,摩擦が大きすぎる問題があった.模型用ボールベアリングを樹脂製ケーブル固定具でボディに取り付けることで,スムーズな回転が得られ,家庭用扇風機の風でLEDを点滅できる風力発電機が構成できることが確認された.
 教材の材料費は表1に示すように2007年時点の市価で2500円程度である.モーター,ベアリングがウエイトを占めるが,発光器や支柱などワンコインショップを利用したことで経費は低く押えられている.

Fig. 2 Wind power generator for Summer Science School in Meiji University.

Table 1 Parts list for the wind power generator

3.風力発電機の諸特性

3-1. 風車  風車は,厚紙に図3の型紙を張付け,実線を切り,破線を谷折にすることで作成する.材料の入手し易さから,A4版,厚さ0.5mmの厚紙で作れるよう,直径を20cmとした.羽根は直線的に折るよりも紙面に対して徐々に傾きが増加するよう反り上げるように折ると良く回る風車となる.
 風車の性能評価には図3(a)(b)(c)の3種を試みた.風力エネルギーから回転の運動エネルギーを抽出する効率ηrotor(=パワー係数)は羽根の折方で大きく変化し,3種の中では羽根に隙間を持たせた(c)が,高い効率を示した.風車の評価には,伝達系やモーター部分の特性評価を必要としたため,結果は3-6節で示す.教材としては,風車には改良の余地が多分にあり,生徒に様々な工夫を試す機会を提供できる部分である.

Fig. 3 Rotor patterns. (a) 16 full blades type, (b) 8 full blades type, (c) 8 half blades type.

3-2. 伝達系  伝達系は風車の回転をモーターへ伝える機構である.風車は直径3mmの模型用シャフトにローレットナットで固定され,シャフトはボディの角材へボールベアリング2個を介して保持される.風車の回転は,輪ゴムをかけた模型用プーリーで2.8倍に増速されてモーターへ伝えられる.
 風車が捉えたエネルギーをモーターへ伝達するまでには,シャフトを支えるベアリングの摩擦,回転を伝える輪ゴムの内部摩擦,周囲の大気の摩擦等による損失が生じる.伝達系の摩擦特性を調べるため,シャフトまたはモーターに金属円盤(慣性モーメントIp = 3.57×10-5 kg/m2)を取り付け,ベアリング部,モーター単体,そしてシャフトとモーターをプーリーで連結した伝達系とモーターを含む伝達系・モーターの回転の自由減衰特性を調べ図4を得た.モーターは電気的に無負荷の状態である.回転数n [Hz]はモーターの起電力の脈動あるいはシャフトに小型の遮光板を付けフォトインタラプタを用いて計測した.いずれの場合も,回転数nは時間tに対しほぼ直線的に減少すると見なせ,(1)式より,平均摩擦モーメントMfを導出した.結果として,Mfはベアリング部では50μNm程度,モーター単体では250μNm程度,伝達系・モーターでは700μNm程度の値が算出された.

(1)

ここで,ω=2πn [rad/s] は角速度である.摩擦を厳密に定量することは難しいが,風車のトルクをモーターへ伝える伝達系では450μNmの摩擦モーメントを常に持つとして,3-6節の全体評価の中で摩擦によるエネルギー損失を評価する.

Fig. 4 Free rotational dumping characteristics of the drive train system and motor.

3-3. DCモーターの発電特性  永久磁石とコイルを用いた直流モーターは,外部からトルクを与え回転させると誘導起電力が生じ,脈動電流を外部へ取り出せる.3極のソーラーモーターでは,図5の挿入図に示す1回転で6回の変動を持つ脈動電圧を発生する.発電用モーターの特性を調べるため,電気駆動時のエネルギーバランスより摩擦特性を,また,外部より機械的に回転させ発電特性を調べた.
 発電用モーターを機械的無負荷状態で直流駆動した場合,投入電力PeM,in(=駆動電圧VM,in×駆動電流IM,in)は内部抵抗RM [Ω]による発熱,摩擦仕事との和に等しく次式が成立する.

(2)

ここで,ωMはモーターの角速度,Mf,Mはモーター内の摩擦モーメントである.投入電力と回転数の関係,内部抵抗(RM = 3.7 Ω)を実測し,Mf,Mは角速度依存性を持つ次式として求められた.

(3)

モーター回転数10 〜 30 Hzの範囲では,平均摩擦モーメントとしてMf,M 〜 224μNmと評価できる.前節で機械的に調べた摩擦モーメントは250μNmであり近い結果である.発電特性の評価には,角速度依存性を含んだ(3)式を利用する.
 発電特性は,発電用モーターに駆動用直流モーターを樹脂チューブで連結し,回転数と負荷抵抗RLoadを変化させて調べた.RLoad = 0.5〜1 kΩに設定し,モーターの回転周波数が10,20,30,40 Hzにおける発電量を取得し,図6を得た.いずれの回転数でもRLoad =5 〜 6 Ωで最大出力が得られ,負荷の大きな領域では出力が負荷抵抗に反比例することが示されている.この特性は内部抵抗を持つ一定起電力の電源に外部抵抗を接続した系の特性であり,磁束の変化量に誘導起電圧が比例することを反映し,回転数が一定ならば起電力も一定であること,内部抵抗と外部抵抗のマッチングが電力を取り出す上で重要なことを示している.
 発電用モーターへ与えられる機械的パワーPmM,inは,摩擦による機械的損失(=ωMMf,M),出力電流IMと内部抵抗RMによるジュール熱損失(=RMIM2),出力電力PeM,out(=RLoadIM2)の和として次式で算出される.

(4)

 図6には,実験データを内挿し,一定の機械的パワー(PmM,in = 70mW)を発電用モーターへ与えた場合の,電気出力,ジュール熱損失,摩擦損失の内訳を負荷抵抗に対して積み上げて示したものである.負荷抵抗に応じて変化する回転数も示している.負荷抵抗3Ω以下の領域は,他の入力パワーのデータの傾向に倣い,推定して描かれている.

Fig. 5 Power generation characteristics of solar motor for given revolution speed and electric load. Insertion shows typical ripple of generated voltage.

Fig. 6 Energy conversion of solar motor in case of 70 mW mechanical input power.

Table 2 Mechanical to electrical power conversion performance of solar motor at 20Ω load


 出力とジュール発熱を合わせた電力と機械的損失の配分を見ると,負荷の増加に対し電力への配分が減り,回転数の増加と共に機械的損失割合が増加することが分かる.負荷が100Ω以上と大きい場合,機械的損失が支配的になる.電力内の配分を見ると,負荷が5Ω以下と小さい場合,内部の発熱損失が大きく支配的になり,10 〜 20 Ωの負荷で外部へ取り出せる電気出力が最大となる.この条件では,機械的入力PmM,inの約57%が電力として出力できることが分かる.また,機械的損失も含めたエネルギー解析では,電気出力が最大となる電気的負荷は,回転数一定条件で得た図6の結果と異なり,総合的な設計が必要なことを教えてくれる.
 同様の解析で得た機械的入力PmM,in =30〜200mW,負荷抵抗20Ωに対する電気出力,発電効率を表2にまとめる.選択したモーターが小さな入力に対しても比較的高い発電効率を持つこと,入力仕事率が大きくなるほど発電効率が高くなることが現れている.

3-4. 昇圧回路特性  小電力,低電圧の電気を昇圧するブロッキング回路[5,6]を図7に示す.電源の正極はトロイダルコアに銅線を40巻き程度逆向きに巻いた2つのコイルを通じトランジスタのベースとコレクタへ連結されている.直流入力に対し,コイルとトランジスタにより発振が起こり,コレクタ電流の急激な減少に伴い,コイルの誘導起電圧(=コレクタ電圧)が急上昇し,この昇圧された電気がショットキーダイオードで整流され,平滑コンデンサーを介して負荷へ供給される.
 負荷抵抗を変え,直流入力に対する回路性能を測定した.図8に負荷抵抗900Ω時の出力電圧Vb,out,出力電力Pb,out,入力電力に対する出力電力の割合として定義した効率ηboostを示す.入力電圧Vb,inが0.6 Vを超えると昇圧動作が始まり,入力1 Vで出力2.5V,入力2 Vで出力4.5 Vと入力電圧が0.6 〜 3 Vの範囲では,2倍以上の電圧上昇率がある.電力は,昇圧動作が始まると取り出すことが可能になり,入力1 Vで10 mW,2 Vで35 mW程度となっている.効率ηboostは,昇圧動作下で55 % 〜 40 %程度,入力電圧が高くなると若干低下する傾向を示した.
 また,昇圧回路は,Vb,in = 0.77 Vの条件でRLoad = 2〜10 kΩまで変化させたところ,(5)式のように,出力電圧Vb,outは負荷抵抗の0.52乗に比例することが実測され,負荷の変化に対し出力電力Pb,outはほぼ一定であることも確認された.

(5)

Fig. 7 Blocking circuit for boosting voltage.

Fig. 8 Boosting performance of the Blocking Circuit.

3-5. LED発光器の特性  LED発光器は,本来,ボタン電池(1.5V)3個で4個のLEDを7種のパターンで点滅させる玩具である.外観は長さ20 cm,直径17 mmの透明な棒状(図9)であり,プッシュボタンスイッチを押す毎に点滅パターンが変化する.LEDは赤色,白色,青色など単色4個の製品と,赤色,青色,緑色など多色4個の製品がある.この特性試験では多色の製品を用いた.連続点灯モードでは4個のLEDが200 Hz程度の周期で点滅し肉眼では連続点灯しているように見える.一斉点滅モードでは4個のLEDが同時に点滅し,リレー点滅モードではLEDが順に1個ずつ点滅する.供給電圧により,発光強度と消費電力が異なり,概ね供給電圧2 V以上で赤色LEDの発光が始まり,供給電圧3 V以上で緑色,青色LEDも発光する.表3に直流を供給したときの消費電力の実測値を示す.連続点灯,一斉点滅モードはリレー点滅モードより3〜4倍の電力を消費すること,供給電圧が増加すると指数関数的に消費電力が増えることが分かる.
 なお,風力発電機へ発光器を組込むには,電池を取り除き,ケースに穴を開け,電池フォルダーの端子と昇圧回路の出力端子をケーブルで接続する.さらに,プッシュボタンスイッチの電極と風車ボディに取り付けたクリップ製スイッチをケーブルでつなぎ,風でゆれる短冊の動きでスイッチの接触が生じ,起動,発光パターンの変化が自動的に生じるよう加工した.

Table 3 Power consumption of LED light stick

Fig. 9 LED light stick.

3-6. 総合特性  送風ファンの風で風力発電機を動作させ,各部の電力・効率を評価した(表4).風車は図3の多翼型3種類,風速uwは回転風速計(カスタム社AHLT-100)で計測し,家庭用扇風機で得られる2 〜 4 m/s程度とした.発光器は一斉点滅モードとした.風力パワーPwは表4脚注に示すよう,風車の走過面積Aを通過する総運動エネルギーから算出した.
 各部のエネルギーフローを特定するには,まず,モーターの回転数,発電電圧,電力量を計測し,3-3節の手法・特性から発電モーターへの機械的入力仕事率PmM,in(=PDT)が算定される.次に,3-2節の伝達系の摩擦特性と回転数から伝達系での摩擦損失が評価され,それらの合算として風車が抽出したパワーProtorが算出される.昇圧回路は,3-5節同様に電気計測により入出力パワーが評価される.
 エネルギーフローに沿って結果を見ると,風車が抽出したパワーProtorは,40 〜 130 mWであり,風力パワーPwとの比として定義された効率ηrotor(=パワー係数)は8.6 〜 28 %である.効率は,風速の低いときに高い傾向を示し,多翼型風車の特徴が現れている.翼幅の狭い風車では回転数が高く,高い効率を示した.また,羽根の折り曲げ方によって効率は変化し,羽根形状を試行錯誤してパワー係数が比較的高い状態でこのデータを取得している.
 伝達系のエネルギー伝達効率ηDTは,風車の抽出したパワーProtorに対する発電用モーターへ伝えられたパワーPDTの比として算出した.ηDT = 36 〜 53 %と,約半分以上のエネルギーが摩擦で失われており,潤滑性能が重要なことが分かる.
 発電効率ηgenは,モーターへの機械的入力PmM,in(=PDT)に対する発電量Pgenの比である.ηgen = 18 〜 54 %となり,風速が低く回転数も低い場合には効率が低く,回転数が高いと効率が高い傾向にある.効率は,高い条件でも,3-3節で調べた最大発電効率の8割程度となっている.昇圧回路の変換効率ηboostは34 〜 54 %と,直流入力に対し調べた特性と同程度の結果を示した.
 最終的にLEDの発光に供された電力PLEDは1.1 mW〜17 mW,風力パワーPwに対する総括効率ηoverallは,0.57 % 〜 1.5 %と非常に小さいことが判明した.
 表5に,各部の大雑把な効率を,商用風力発電機(WKA-60,ローター直径60 m,出力1200 kW)の効率[7]と共に示す.比較すると,教材の性能向上には風車の効率を改善に加え,伝達系や発電機の摩擦を大幅に減らす工夫,電気系の効率改善と各部に課題があることが分かる.逆に,商用機では,風車の高効率化,摩擦や電気系の損失を大幅に低減するシステム的な工夫により,電力を効率良く取り出していると言える.なお,風力エネルギーの内,風車で連続して取り出せる利用可能なエネルギーは最大59.4 %(ベッツの限界)[8,9]であり,商用機では,利用可能エネルギーの74%を風車が取り出していることとなる.

Table 4 Overall characteristics of the wind power generator

* (A: Swept area of rotor, ρw : Density of air)

Table 5 Efficiency of wind power generation systems


 また,図10,11に,本教材と上記商用機のエネルギーフロー図を示す.視覚化により改めて,本教材の各部の効率が低く,改善の余地があること,エネルギー損失は摩擦熱やジュール熱として環境へ排出されていること,一方,商用機は各部の効率を高める改善により,実用化が果たされていることが分かる.
 本教材は,各部の特性,全体特性を明らかにしたことで,高等教育の場でも活用できるようになった.具体的には,風力発電システムが風のエネルギーを抽出する風車,風車の回転エネルギーを発電機へ伝達する伝達系,機械的エネルギーを電気的エネルギーへ変換する発電機,発電された電気を負荷に応じて変換する電気設備が調和して構成されていること,また,風車の効率を上げる流体力学的検討や摩擦を低減したエネルギー伝達方法,効率の高い発電・変電方法など重要な課題が各部に見出せ,これらの課題解決に対する科学技術の寄与が社会を支えていること,さらに,便利に利用している電気エネルギーは高度なエネルギー変換過程を経て得られる大切なものであることを学ぶ材料とすることができる.

Fig. 10 Energy flow diagram of the present education material wind power generator. Fig. 11 Energy flow diagram of a commercial wind turbine system (WKA-60).

4.まとめ

 本稿は,小中学生向け科学教室用に考案した風力発電機教材を,その定量的評価と共に報告することで,理科,科学技術教育に貢献し,高等教育にも活用できる教材を提供するものである.
 考案した教材は,厚紙製風車,直流モーター,昇圧回路,LED発光器を用いた風力発電機であり,小学校高学年の児童が2時間程度で製作できる.教材は,家庭用扇風機の風でLEDが点滅することで風力発電を実感できる.風車の形状を工夫することで,性能を改善できる余地があり,科学技術を楽しむ要素も備えている.
 教材に対し,伝達系の摩擦特性,小型モーターの摩擦特性,発電特性,昇圧回路の特性をそれぞれ実験的に調べ,さらに,全体の動作特性を調べることで,各部および全体のエネルギー効率を明らかにした.風力エネルギーの約1%がLEDの発光に使われる低い全体効率が示された.また,本教材は,教材の定量的な評価に加え,商用機との比較により,風力発電システムや科学技術の有用さを学べ,高等教育の場でも活用できるものとなった.

参考文献

1. Ohshima, M., Science and Technology Education for Junior and Senior High School Students Through Research, Journal of JSME, Vol. 110 No.1064(2007), pp. 509-510
2. White Paper on Manufacturing Infrastructure 2007 (in Japanese), (2007), pp.283-286, Ministry of Economy, Trade and Industry, http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/
3. White paper on Science and Technology 2006, (in Japanese), (2006) Section 3-3, Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, http://www.mext.go.jp/
4. Mabuchi Motor Web catalog, RF-500TB, http://www.mabuchi-motor.co.jp/ja_JP/cat_files/rf_500tb.pdf, Mabuchi Motor Co.
5. Giacoletto L. J., Electronics Designers’ Handbook 2nd Ed. (1977) pp.19・32-19・37, McGraw-Hill, Inc.
6. Fink D. G., Christiansen D., Electronics Engineers’ Handbook 3rd Ed. (1989) pp.16・45-16・47, McGraw- Hill, Inc.
7. Hau E., Wind Turbines - Fundamentals, Technologies, Application, Economics - 2nd Ed., (2006), pp.485-532, Springer
8. Hau E., Wind Turbines - Fundamentals, Technologies, Application, Economics - 2nd Ed., (2006), pp.81-89, Springer
9. Ushiyama I., Introduction to Wind Turbine Engineering (in Japanese), (2002), pp. 48-54, Morikita Publishing Co.