1. はじめに
過去に発生した大規模地震災害である関東大震災(1923年9月1日),阪神・淡路大震災(1995年1月17日)そして東日本大震災(2011年3月11日)では,一部地域で火災が発生し地震被害を受けた地域に更なる損害を与えた.
このように大規模な地震災害後にはしばしば火災が発生し延焼する.そして,その消火活動には常に多くの困難を伴う.第一には,大規模災害後に発生する火災の特徴として,多数の火災が広域にわたり同時に発生する.
そのため公設消防の対応能力つまり所有する消防車両数を上回る件数の火災が同時に生じると,一部の火災対応が不可能となる[1,2].
その結果,消火活動を行えないまま延焼・拡大を許す火災が生じ,被害拡大へとつながる[1-3].
そして第二には,地震の強烈な衝撃により,また沿岸部ではそれに加えて津波の影響により,道路,電気,水道そして消防水利のようなインフラストラクチャーの破壊や機能不全が生じる.
例えば道路では,路面の陥没・損壊,液状化現象の影響による路面変形,倒壊した家屋による道路閉塞また津波による路面冠水などによって車両通行が阻害される[3-5].
その結果,消防車両が火災現場へ到着できず消火活動が不可能となる.更に消防水利においても,断水そして倒壊家屋などによる消火栓の埋没により使用が不可能となる[3-5].
このように大規模災害後の火災には通常の消火法が利用できないという状況が発生する.
更に第三の困難さとして,消防車両つまり消防士が火災現場に到達できない状況下では,発生した火災の延焼を許すか否かは地域住民の初期消火活動の成否に大きく依存する[1,2].
しかし緊急時に一般市民が取り得る消火手段は,各家庭に備え付けられた消火器の使用やバケツリレーで搬送した水の利用など多くはなく,またそれらの方法は火災規模が大きくなるとほとんど消火効果を期待できなくなる.
このように大規模な地震や災害の発生後に生じる火災に対する消火活動は,常に多くの困難を伴う.
その問題を解決するためにも,緊急時に利用可能で,かつ一般市民にも簡単に使用でき,消火効果の高い新しい消火法そして消火機器の開発が重要であり,また必要である.
1-1. 現在使用されている消火法の利点と欠点[1]
もっとも広く利用されている消火剤は水である.これは水が比較的簡単にそして大量に手に入れることができ,また人体に対しても環境に対しても無害であるという大きな利点があるためである.また水は,液体の場合,その蒸発潜熱そして比熱が他の物質に比べて大きく火源から熱を吸収して冷却する効果が高い[6-8].そのため木材などの固体の可燃物が燃焼して形成される普通火災(火災区分でいうA火災)に対して優れた消火効果を発揮する.しかし火災領域へ放出された大量の水の一部は,その周囲へ流れだし水浸しにする.その結果,建築物,電気・電子機器,書籍そして衣類などに対する水損や汚損といった,火災によってではなく消火活動による2次的な被害・損害を水は引き起こす.このことは水を利用した消火法の欠点である.
他方,一般家庭に普及している消火器に充填されているリン酸二水素アンモニウムなどの粉末消火剤は,火炎中で生じている燃焼反応の進行を阻害・抑制することで消火を達成する.そのためリン酸塩を用いた粉末消火剤は消火効果が高く,普通火災(A火災),液体燃料などの油火災(B火災),そして電気設備で生じる電気火災(C火災)にも大きな効果を発揮する[6,7].そのためABC消火剤と呼ばれる.しかし粉末消火剤を使用した場合,その消火活動を行った空間を元の状態に戻すためには,丁寧で入念な掃除が必要となり,消火後の現状復旧は決して簡単なことではない.
ただし,窒素,二酸化炭素そしてアルゴンなどの不活性ガスを用いたガス消火法では水損・汚損が生じない.しかし気体消火剤は周囲空気と相互拡散によって容易に混合するため,消火器や消火設備から消火ガスが放出されて火源まで到達する間に濃度低下が生じる.そのためガス消火の場合,遠方火源に対して高い消火効果が得られない.そこで気体消火剤では火源のある空間中を閉鎖し,そこに大量のガス消火剤を供給する全域放出という手段がとられることがある.この場合,火災域だけでなく空間全体の酸素濃度が極端に低下するため,逃げ遅れた人がいた場合,窒息する危険性がある[6,7].そのため消火ガスの全域放出は,人の避難が充分に確認されてからしか使用することができないという欠点がある.
またウォーターミスト消火では,水を数百μm以下の水滴直径まで微粒化して火炎に供給することで,火炎面で水滴を瞬間的に蒸発させ,水蒸気の発生を容易にする[8,9].その結果,水としての消火効果だけでなく,水蒸気のガス消火剤としての効果も発揮され,結果としてウォーターミストは非常に高い消火効果を示す[8,9].そのため棒状注水による消火に比べて使用される水量が大きく減少し,極端な水損・汚損を回避することが可能となる.しかしウォーターミストでは,水滴質量が非常に小さいため,その慣性力も小さい.その結果,火源が大きく火炎によって生じた自然対流の流速が非常に大きい場合,ウォーターミストがその自然対流の流れに逆らって火炎面や可燃物の熱分解領域へ到達することが困難となる.従ってウォーターミストは遠方火源への輸送も簡単ではない[8,9].
他には泡消火剤もあるが,これも水による消火と同様,消火活動による2次被害を伴い,また遠方火源への輸送も簡単ではない[6].更にハロン系のガス消火剤のように,消火効果が高く,気体中のガス濃度を人間が窒息するほどに高めなくても消火を達成できるものもある.しかしハロンはオゾン層破壊という深刻な地球環境問題を引き起こすため,その利用は美術品保管・展示室,図書館そして通信機械室などに限定されている[7].
このように,どのような消火法および消火剤でも,それぞれ利点と欠点を有している.そこで,著者らはこれまであまり注目されてこなかった消火剤の輸送方法を検討・工夫することで,その消火剤の消火効果の増大と使用量の低減,水損・汚損の回避,そして,これまでに使用そして開発されてきた消火剤の汎用性や使用性を高めることを目的としたExtinguishing Agent Delivery(EAD)というコンセプトに基づいた新しい消火法の開発を目指して実験的に研究を進めている.このEADというコンセプトは著者が現在提案しているものであり,その基本的な考え方について次節で説明する.
1-2. Extinguishing Agent Delivery(EAD)
消火剤を放出する消火機器または設備から火源までの消火剤の輸送方法を工夫することで,消火剤の利点を維持しながら同時に欠点を減らして消火効果を高めることを目的としたExtinguishing Agent Delivery(EAD)というコンセプトは,医薬品開発において使用されているDrug Delivery System(DDS)という概念[10-12]を模して著者が考え出したものである.そこではじめにDDSについて簡単に説明したい.
DDSとは,薬物を人体に適用するための新しい投与方法または投与形態を開発し,薬の体の中での動き方(体内動態)を制御することを目的とした技術のことをいう.このDDSの利用により,必要最小限の量の薬物を必要な場所(臓器や組織等)に必要なタイミングと適切な期間で継続的に供給することを可能とし,同時に副作用の抑制そして薬の効果を最大限に発揮させることを目的としている.このDDSの目的を達成するために,主に3つの薬物輸送技術が重要となる.1つは薬剤放出制御技術である.これは薬剤の体内での溶解・放出挙動を空間的にまた時間的に制御することで,薬剤の体内での濃度や作用期間を調節することを可能とする.2つめは薬剤標的化技術である.これは目的の場所(部位・組織)に薬剤を局所的に輸送・到達させる技術である.この標的化技術により,他の健康組織に対する薬剤の副作用を抑制することができる.3つめは薬剤吸収改善技術である.これは有効成分の浸透・吸収を制御するものである.この技術により,従来であれば体内組織への吸収が悪く効果の低い薬剤の作用を向上させることができる.このような要素技術に支えられるDDSを使用することで,副作用の軽減,そして投薬に伴う苦痛や投薬回数の手間を減らし,患者のQuality of Lifeを改善することが可能となる.さらに製薬会社にとっては副作用のために開発を諦めていた薬物についてもDDSによって使用の道が開かれる可能性が生まれるなどの利点が存在する.
このようなDDSは火災消火の例え話を用いて次のように説明されることがある[10].
『そのような時代の薬の使い方は,大きなビルの一室のごみ箱がたばこの吸い殻によって火がついたとき,ビル全体を水浸しにして消すことに例えられる.それを,一室だけに放水し,更にできればコップ一杯でごみ箱の火を消すようにするのがDDSのねらいである.(永井恒司,放出制御型薬物送達システム,薬学雑誌,Vol.108, No.7, pp.613-624, 1988.)』
このDDSのコンセプトを説明するための消火のたとえ話を,実際に火災消火で行おうとするのが,著者が提案しているExtinguishing Agent Delivery(EAD)である.より具体的に言えば,EADの使用により,消火剤を目的とする場所に適切に輸送し,そして最も効果的なタイミングで標的とする火炎位置に消火剤を放出することで消火効果を増大させ,また同時に消火に伴う2次的な被害である水損や汚損を回避し,更に,これまで対応が簡単では無かった遠方火源に対する消火(長距離消火)や燃焼領域だけに消火剤を到達させるピンポイント消火などを達成することを目的としている.ちなみにEADとは,古英語にある単語で,“Happiness”そして“Prosperity”という意味を表す.
これまでに著者の研究室ではEADのコンセプトに基づいた新しい消火法の基礎研究を進めてきている.例えば,カプセルに消火剤を充填することで周囲空気との拡散・混合を抑制し,そのカプセル壁を火炎との接触または固体壁面への衝突によって破壊することで,至近距離から高濃度の消火剤を火源へ供給して消火を達成するカプセル消火法の研究[13-17],また,流体に追従する微粒子ならば,その渦運動の中に取り込んで遠方まで輸送可能な流体現象である渦輪を利用した渦輪消火法の研究[16,18],そして同時多発的に火災が生じた場合,各火炎の消火を迅速に達成するために爆薬などで形成される爆発現象を利用して,ブラスト波とその背後の高速気流を利用して消火を達成する爆風消火法の研究[19],更にウォーターミストよりも大きなミリオーダーの巨大液滴を用いて,火源によって生じる自然対流に影響を受けず,その液滴の慣性によって狙った場所に水滴を到達させ,火災現場に存在する高温壁面(例えば,可燃性固体の熱分解領域や火炎周囲の加熱された壁,天井など)に,水滴を衝突させることで瞬間的に水滴の一部を蒸発させ,そのときに発生する水蒸気によって消火を達成するという間接消火法の研究[20]などを行っている.今回のTED Plazaではカプセル消火法について紹介したい.特に,これまで消火カプセルとしてシャボン玉[13,14,16]や球状中空氷[17]などを用いてきているが,ここではゴム風船を利用した場合の消火法[15]について紹介する.
1-3. ゴム風船消火法について
不活性ガスを用いたガス消火法は電気絶縁性に優れ,また狭い隙間にも到達が容易であり,そして消火活動に伴う水損・汚損を回避できる利点がある.通常,消火ガスは消火機器から噴流形態で火源に向かって放出されるため,その噴流のエントレインメントによって周囲空気を巻き込み,また同時に周囲空気との相互拡散によって混合し,消火ガス濃度は空間中の進行に伴い低下し,その消火能力を大きく減少させてしまう.そこでゴム風船をカプセルとして用いて消火を行う.ゴム風船はどのような不活性ガスも充填することができ,また火炎と接触することでゴム膜が溶融して簡単に破膜する.またゴム膜に働く張力によって,ゴム風船に充填された消火ガスは周囲大気より高い圧力を有するため,その破裂と共にゴム風船から火源に向けて比較的大きな速度を有して高濃度の消火ガスを供給できる.そして不活性ガスが大きな速度を有して火炎に作用することで,燃料や酸素濃度の希釈や火炎からの熱吸収というような不活性ガスの消炎効果だけで無く,吹き飛びによる消炎効果も加わることが期待できる.以降では,ゴム風船消火法を用いた実験から,これまでに明らかになったその消火特性について詳細に説明する.
2. 実験装置及び方法
2-1. ゴム風船消火実験装置
ゴム風船消火の実験装置の概略を図1に示す.不活性ガスは高圧ボンベから供給し,ニードルバルブによって流量を調整され,マスフローメータ(山武,CMS0020)によってその流量を測定した.そして最終的に流路出口に取り付けたゴム風船に一定流量で不活性ガスを充填した.ゴム風船に充填した不活性ガスは,窒素,二酸化炭素,アルゴンそしてアルゴン80%と窒素20%の混合気を使用した.ここで,本実験で使用した不活性ガスの熱的な物性値と消火効果の大きさを示す最小消火濃度(Minimum Extinguishing Concentration: MEC)の値を表1に示す.表1には,不活性ガスの密度ρ [kg/cm3]と定圧比熱Cp [J/kg・K],ρとCpを掛けて算出した単位体積あたりの熱容量の値を示している.またMECの値はCup burner法を使用し,n-ヘプタンで形成された火炎を用いて測定された値であり,その値が小さいほど消火効果が高い消火剤であることを意味する.表1から不活性ガスの消火効果は,単位体積当たりの熱容量の値が大きいほど高いことがわかり,その順位は二酸化炭素>窒素>アルゴンとなっていることがわかる.これは不活性ガスが,その主たる消火効果として火炎からの熱吸収によって火炎温度を低下させて消火を達成していることを意味している.
消火対象には液体燃料で形成したプール火炎を用いた.液体燃料を貯める容器は,火炎の大きさを変化させるために異なる内径を有する4つの黄銅製の円形火皿を用いた.各火皿の内径とリムの厚みは,内径 47 mm(リム厚さ1mm),56 mm(リム厚さ2mm),76 mm(リム厚さ2mm)そして94 mm(リム厚さ3mm)とした.火炎形成には発熱量の異なる3つの液体燃料を用い,n-ヘプタン,1-ブタノールそしてエタノールとした.それら燃料の標準状態での低発熱量(気体):Q [MJ/kg]を表2に示す.表2から,各液体燃料の発熱量の大きさはn-ヘプタン>1-ブタノール>エタノールの順となることがわかる.
カプセルとして使用したゴム風船は,図2に示すように寸法の異なる2種類のマルサ斎藤ゴム社の天然ゴムラテックス製の風船を使用した.各ゴム風船は充填できるガス量に限界があり,それを超えてガスを充填すると自然に破膜したため,燃料容器の大きさにより使用するゴム風船を変えた.火炎の大きさが比較的小さい燃料容器径47 mmと56 mmのプール火炎では,図2のType Aのゴム風船を用いた.他方,比較的火炎規模が大きい燃料容器径76 mmと94 mmのプール火炎の場合は,図2のType Bのゴム風船を使用した.ゴム風船は不活性ガスを充填して膨らませたときの形状がほぼ等しくなるように,図2のゴム風船の画像に記した線の位置を僅かに超えて不活性ガスを供給する金属パイプを差し込み,ゴム風船画像の線の位置で糸を用いて固定して不活性ガスを充填した.また不活性ガスのゴム風船への充填口は,その中心を燃料容器のリム上端と同じ高さに配置し,膨らんだゴム風船の先端中心が火炎基部に接触して破裂するようにした.火炎基部にゴム風船先端が接するように配置したのは,消炎するか否かの火炎の安定性を火炎基部が支配しているからである.
|
Fig. 1 Experimental setup
|
また燃料容器に注いだ液体燃料の液面の高さは,燃料容器のリム上端とは一致させず,リム上端から2.5 mm下げた位置に液面がくるように調整した.これはゴム風船が破裂したときに生じる不活性ガスの流れで液体燃料が大量に吹き飛ぶのを避けるためである.また燃焼状態と火炎高さを安定させるため,液体燃料は各燃料種で適切な余燃時間を設けて消火実験を行った.n-ヘプタンとエタノールでは全てのパン径で予燃時間を2分に設定した.1-ブタノールだけは全てのパン径で余燃時間を4分とした.
|
|
(a) Type A
|
(b) Type B
|
Fig. 2 Rubber balloons
Table 1 Thermal properties of inert gas at 0.1 MPa and 298.15 K and extinguishing effectiveness of inert gas evaluated with cup-burner method
|
|
Table 2 Heats of combustion at 0.1 MPa and 298.15 K [22]
|
|
2.2 ゴム風船の特徴について
本研究で使用したゴム風船の特徴として,図1に示す液柱マノメーターによりゴム風船にガスを充填したときのゴム風船の内圧と大気圧との差圧と充填ガス量V [cm3]との関係を調べた.その結果を図3に示す.ゴム風船への充填ガスは窒素を用いた.図3からType AとType Bの風船とも,充填ガス量の増加に伴い差圧の値は複雑な振る舞いを示すが,定性的に同様であることがわかる.本研究では図3の中に破線で示したガス充填量よりも,常に値が大きい範囲で実験を行ったため,ゴム風船内と周囲大気圧との差圧はガス充填量が増加するほど増大する条件となっている.また差圧の値に注目すると,小さいゴム風船であるType Aの差圧の方が,大きなゴム風船であるType Bの差圧よりも2倍ほど値が大きいことがわかった.
2.3 ゴム風船消火実験について
ゴム風船消火実験は次のように行った.はじめに消火対象であるプール火炎を形成した.次に,目的とする不活性ガスの体積V [cm3]をゴム風船に充填した.充填量の決定には,不活性ガス流量を一定でゴム風船に供給し,その充填時間を計測することで行った.そしてその後,ゴム風船を送り台により火炎側方から火炎基部に風船先端が接するまで移動そして停止し,火炎によってゴム膜が融けて破裂するまで待った.ゴム風船が破裂し,火炎全体が完全に消滅した場合を消火成功とし,その判定は目視で行った.消火の確率は消火成功回数を10回の実験回数で除することで算出した.そして同一条件で3回行って得た消火確率の値を平均化したものを消火確率P [-]として算出した.
|
|
(a) Balloon type A
|
(b) Balloon type B |
Fig. 3 Relationship between the pressure difference between the inside and outside of the rubber balloon, and the filling gas volume at 293 K and 0.1 MPa (The filling gas was nitrogen).
3.実験結果及び考察
3.1 破裂するゴム風船から放出される流れ
ここでゴム風船が一点から破膜して破裂した場合,内部に充填されたガスがどのように放出されるかを説明する.図4は破裂するゴム風船から放出されるガスの挙動を,高速度カメラ(Keyence, VW-9000,4000 fps, exposure time: 1/4000 s)と光源にメタルハライドランプ(Photron, HVC-UL, 250 W)を用いて撮影したものを連続画像として示したものである.ゴム風船に充填したガスは窒素であり,充填量は2130 cm3である.そして破膜開始はゴム風船の斜め下に置いたロウソクの火で生じた高温の燃焼ガスによって行った.また充填ガスの挙動を可視化するために,シリコンオイルをネブライザによって霧化したものを窒素ガスに添加してゴム風船に充填した.図4の画像の中で,ゴム風船が割れた後に白く見える領域が不活性ガスの流れを示す.また0 msはゴム風船が破裂する直前の時間としている.
まず図4の破膜後1.25 msの画像では,ゴム膜が裂けた部分から画像の左方向に窒素ガスが放出されていることがわかる.他方,破膜したゴム膜は収縮し始め,また同時に縮むゴム膜上を亀裂が破膜位置から画像右方向へ進展していることがわかる.ここで観察された流れはゴム風船の内圧と周囲大気との圧力差によって駆動されていると考えられる.このゴム風船の破膜位置から最初に放出される流れを本研究ではFirst flowと呼ぶ.図4の2.5 msの画像では,ゴム膜上を亀裂がゴム風船の固定端へと進むのと同時に,ゴム膜も縮んでいることがわかる.そして4 msの画像では,ゴム膜上の亀裂が風船の固定端に到達し,また同時にゴム膜が固定端より画像右側まで縮んでいることがわかる.ゴム膜が固定端まで収縮したのと同時に,固定端の位置から,画像の右側から左側に向かって窒素ガスの流れが形成されていることがわかる.このゴム膜が収縮することで生じた流れをSecond flowと呼ぶ.図4の5 msと8.75 msの画像を見ればわかるように,Second flowが形成されることでゴム風船から放出された気体はガス塊として破膜方向に移動するとがわかった.
以上のように,ゴム風船を一点から破裂させると,駆動原因が異なる2つの流れが形成されることがわかった.この図4の連続画像を利用して,流れの速度を測定した結果,First flowの初期の速度は約30 m/s,そしてSecond flowの初期の速度は約20 m/sであり,破裂するゴム風船から放出される不活性ガスの流れの速度は,数十m/sと比較的大きいことがわかった.そこで次に,この破裂するゴム風船から放出される不活性ガス流れによって,どのようにプール火炎の消火が達成されるかを説明する.また,このような2つの流れは表面張力を有するシャボン玉が破裂した時にも形成されることが知られている[13,14].
|
Fig. 4 Series of sequential direct images of bursting process of balloon B and flow process of the filling gas released from bursting balloon
|
3.2 ゴム風船によるプール火炎の消火過程
図5にゴム風船消火が成功した場合の消火過程を示す.この画像の記録にはデジタルカメラ(Casio, EX-F1, 300 fps,exposure time: 1/300 s)を用いた.燃料容器直径は76 mm,液体燃料はn-ヘプタン,不活性ガスは二酸化炭素を使用し,その充填量は2050 cm3とした.また画像の時間はゴム風船の破膜直前を0 msとしている.
図5(a)から,ゴム風船の破膜後3.3 msでゴム風船から放出された不活性ガスの流れによって,プール火炎の基部部分に局所消炎が生じていることがわかる.10 msの画像では,その局所消炎領域は画像右方向へ進展して,火炎が火炎基部部分と下流の輝炎部分の2つの領域に分離される.そして20 msから40 msにかけて,燃料容器上にある火炎基部部分が画像右方向へ大きく吹き飛ばされていることがわかる.他方,分離された輝炎部分は20 msから40 msの時間経過の中で,徐々に火炎面積を減少させしてゆくことがわかる.そして最終的に70 msで火炎全体が完全に消滅し,ゴム風船消火が数十ミリ秒という短い時間で達成されていることがわかる.
次に図5(b)の消火失敗時の火炎挙動について示す.不活性ガスの充填量だけが図5(a)と異なり1900 cm3とし,他は全て同じ条件とした.図5(b)からゴム風船破裂から16.7 msまでは消火成功である図5(a)と火炎挙動はほとんど変わらないことがわかる.しかし40 msの画像では,燃料容器上から完全に右方向に吹き飛ばされた火炎基部の青炎領域が,画像右方向から左方向へ火炎面積を増大させて燃料容器上へ移動する現象が観察された.そして66.7 msの画像では更に,火炎基部部分の青炎領域は,燃料容器上を画像右から左方向へ移動し,その火炎面積を拡大し,最終的に安定したプール火炎が再形成され消火失敗となった.この40 msから66.7 msにおける基部領域の火炎が示した振る舞いは,不活性ガスによって消炎した燃料容器上の空間で,燃料蒸気と空気の相互拡散によって予混合気層が形成され,その混合気層の中を火炎が予混合火炎として伝播したものと考えられる.
このように,ゴム風船によって消火が達成されるか否かは,プール火炎の基部領域に存在する火炎を側方へ完全に吹き飛ばせるか否かによって決定されていると考えることができる.そして,火炎基部を完全に吹き飛ばせず,空間中に残った基部領域の火炎が,局所的に消炎した領域で形成された予混合気層中を予混合火炎として伝播することが可能となる場合,消火は失敗となるといえる.
|
(a) Success case of rubber balloon extinguishment
|
|
(b) Failure case of rubber balloon extinguishment
Fig. 5 Sequential images of extinguishment process of n-heptane pool fire with rubber balloon inflated with carbon dioxide gas |
3.3 消火確率分布
ゴム風船に充填する消火ガス量V [cm3]を変化させて得られた消火確率P [-]の典型的な分布を図6に示す.燃料容器径は76 mm,液体燃料にn-ヘプタンそして不活性ガスには窒素を用いている.横軸は不活性ガス量V,縦軸は消火確率Pである.図6からVの値が小さすぎると,P=0となり消火が全く達成されないことがわかる.そしてVが増加すると,ある値でPが0ではなくなり,その後はVの増加に伴い単調にPも増加することがわかる.そして,不活性ガスの充填量がある値以上になると常にP=1となる不活性ガス量の条件が現れることがわかる.他方,空気をゴム風船に充填して消火実験を行った場合についても,その結果を図6に示している.図6から空気を用いた場合,どれほど充填ガス量を大きくしても常にP=0であり,消火が達成できないことがわかる.この空気の結果から,ゴム風船消火では不活性ガスの消火効果が重要であり,また同時に単純な流れの効果による吹き飛びによって消火が達成されているわけでは無いことがわかる.
ここで常にP=1となる領域における最小ガス量の条件を消火限界Vexと定義する.Vexの値が小さい消火ガスほど,火炎の完全消火を達成するのに必要なガス量がより少ないことを示し,その不活性ガスの消火能力が高いことを意味する.このように消火限界Vexの大小が,消火において重要であるため以降の議論ではVexの値に注目して検討を進める.
|
Fig. 6 Profiles of extinguishment probabilities as a function of volume of the inert gas filled into rubber balloon
|
3.4 消火限界時の不活性ガス量Vexの分布
図7に燃料容器径を変化させた場合に得られる消火限界Vexの分布を示す.液体燃料はn-ヘプタン,不活性ガスは窒素,二酸化炭素そして80%アルゴン+20%窒素の混合気を使用している.またVexは対数軸で表している.まず図7から,燃料容器径が増加すると火炎規模が大きくなり,それに伴って完全消火に必要な不活性ガス量が,不活性ガス種によらず増加することがわかる.また,同じ燃料容器径の値でVexの大きさを比較すると,二酸化炭素<窒素<80%アルゴン+20%窒素 混合気という順で,Vex の値が大きくなっていることが分かる.先の3.2項の図5(a)で示したようにゴム風船消火は数十ミリ秒で達成される.しかし図7は,その短時間の消火過程において不活性ガス種の消火効果の違いが結果に明確に表れていることを示している.そして,その図7の結果は,ゴム風船に充填した不活性ガスの消火効果の大きさが,二酸化炭素>窒素> 80%アルゴン+20%窒素 混合気であることを意味している.
このゴム風船消火における不活性ガスの消火効果の大きさの順は,Cup burner法を用いて決定した不活性ガスの消火効果の大きさの順番[21,23]と同じである.これらの過去の研究から不活性ガスの単位体積当たりの熱容量の大きさが,不活性ガスの消火効果の大きさの順番を決定する要因であることが知られている.そして実際,ゴム風船消火における不活性ガスの消火効果の順位も,表1に示した不活性ガス種の単位体積あたりの熱容量の値の大きさの順とも同様である.
このように本研究の消火法はゴム風船を用いた特殊な方法ではあるが,その実験結果は従来の不活性ガス消火の研究結果と変わらないことがわかった.つまり各不活性ガスのVexの値の決定には,単位体積あたりの熱容量の大きさが重要であるといえる.そこで次に,各不活性ガスで得られた消火限界Vexを用いて計算できる不活性ガスの熱容量に注目して議論を進める.
3.5 消火限界における不活性ガスの熱容量の大きさと燃料容器径の関係
図7の結果からゴム風船消火の消火限界Vexの大きさは,不活性ガスの単位体積あたりの熱容量の大きさに依存していると考えられる.そこで図7の縦軸の値を,消火限界での不活性ガス体積Vexに密度ρと比熱Cpをかけて熱容量に変更したグラフとして図8に示す.横軸は燃料容器径である.この図8から,消火限界での消火ガスの熱容量の値が,不活性ガスの種類に依存せず1つの曲線上に統一的に表されることがわかる.この結果は,燃料容器径つまり火源の大きさが決まると,その火源で形成される火炎を完全に消火するのに必要な消火ガスの最小の熱容量の大きさが,消火ガスの種類によらず1つの値に定まることを意味している.次に,この熱容量による消火限界の整理が,液体燃料種を変化させ,発熱量が変わった場合でも成立するのかを検討する.
|
|
Fig. 7 Inert gas volume at extinguishment limit as a function of fuel pan diameter
|
Fig. 8 Profiles of the heat capacity of inert gas at extinguishment limit as a function of fuel pan diameter
|
3.6 消火限界における不活性ガスの熱容量の大きさと燃料容器径の関係
図9は,エタノールのプール火炎を窒素,二酸化炭素そして80%アルゴン+20%窒素 混合気で消火して得られた消火限界Vex,そして1-ブタノールのプール火炎を窒素,二酸化炭素そしてアルゴンで消火して得られた消火限界Vexを,熱容量ρCpVexの値にして図8に加えたものである.図9から,図8で示したn-ヘプタンでの消火限界時の熱容量の分布と同様に,エタノールそして1-ブタノールにおいても,燃料容器径が決まると消火に必要な不活性ガスの最小熱容量の値が不活性ガス種によらず1つの値に定まっていることがわかる.ただし,どの容器径においても消火限界時の熱容量ρCpVexの大きさは,エタノール火炎の値が最も小さく,そして次いで1-ブタノール火炎,そして最も大きな値はn-ヘプタン火炎が示している.この消火限界時の不活性ガスの熱容量の値の順番は,表2で示した燃料の単位質量当たりの発熱量の大きさの順番と等しく,発熱量に比例していることがわかる.つまり図9の結果は,単位質量あたりの発熱量が大きな燃料の火炎ほど,消火するのに必要となる不活性ガスの最小の熱容量が増加することを意味している.そこで次に,縦軸に発熱量の影響を反映させた結果を用いて更に議論を行う.
|
Fig. 9 Heat capacity of inert gas at extinguishment limit for different fuel species as a function of fuel pan diameter
|
3.7 液体燃料の燃焼熱と消火限界時の不活性ガスの熱容量との関係
図9で示したように消炎限界時の不活性ガスの熱容量の値は,燃料種の発熱量に比例していることがわかった.そこで単位質量当たりの燃料から燃焼反応によって生成される発熱量の値を示す低発熱量Qを,消火限界での不活性ガスの熱容量ρCpVexで除したQ/ρCpVex [K/kg]として縦軸を表したグラフを図10に示す.図10から再び全てのプロットが燃料種に依存せず1つの曲線上に統一的に表されることがわかる.このことは燃料容器径の大きさ,つまり火炎の大きさが決まると不活性ガス種だけでなく,燃料種にもよらずQ/ρCpVexが1つの値に定まることを意味している.また図10から燃料容器径の値が増加するとQ/ρCpVexの値が減少傾向を示すことがわかる.この図10の結果から,ゴム風船消火で得られる消火限界での不活性ガス量の決定にはQ/ρCp [K・cm3/kg]の大きさが重要であることがわかった.
不活性ガスによる拡散火炎の最小消火濃度(MEC)はCup burner法を用いて決められ,消炎に至るときの火炎温度がほぼ一定となることが知られている[21,23].ゴム風船消火はカップバーナ法のように徐々に消火剤を火炎に供給するわけではないため,その消炎過程の詳細は大きく異なる.しかし,もしゴム風船消火でも消炎時の火炎温度がCup burner法と同様にほぼ一定あるならば,ゴム風船消火においても不活性ガスが火炎から熱を奪うことによって火炎温度を限界の温度まで減少させ,最終的に完全消火を達成していると考えることができる.その場合,不活性ガスが火炎から奪う熱量の大きさはρCpVexに依存し,発熱量が大きい燃料の火炎ほどρCpVexの値が増加する必要があることになる.その考えに基づけば,図9に示したように同一の燃料容器径で発熱量Qが大きい火炎ほどρCpVexが大きな値を示したことは理解できる.
以上のように,ゴム風船に充填した不活性ガスで消火を行った結果,その消火特性として,不活性ガスの単位体積当たりの熱容量と液体燃料の単位質量当たりの燃焼熱の大きさによって消火限界の不活性ガス量が決定されることがわかった.また,不活性ガスには酸素や燃料の希釈を通して消炎をもたらす効果と火炎からの熱吸収によって火炎温度を低下させて消炎を達成する熱的な消火効果の2通りがあるが,ゴム風船消火では熱的な消火効果によって消火が達成されていることが明らかとなった.
|
Fig. 10 Values of the lower heating value divided by the heat capacity at the extinguishment limit vs. Fuel pan diameters
|
4.まとめ
消火剤の輸送方法を工夫することで消火剤の消火効果の増大と消火活動による二次的な被害の抑制を目指すExtinguishing Agent Delivery (EAD)というコンセプトに基づいて,著者は新しい消火法の開発を行っている.その消火法の1つとして,ゴム風船を用いた不活性ガス消火法の消火実験結果について説明を行った.このゴム風船消火法は,ゴム風船に不活性ガスを充填することで周囲空気と消火ガスの混合を防ぎ,また火炎に接触することでゴム風船が破裂し充填された不活性ガスを火炎の至近距離から瞬間的に供給するという消火方法である.
結果としては,ゴム風船が破裂すると,内部に充填されたガスは2つの流れによって火源へと放出されることがわかった.1つは,ゴム膜の張力によって生じたゴム風船内部と周囲大気圧との差圧によって駆動される流れ(First flow)で有り,もう一つは破膜したゴムが収縮することで形成される流れ(second flow)である.これら2つの流れによってゴム風船から放出された不活性ガスは,ガス塊となって火炎へと供給されることになる.また,ゴム風船消火の消火実験から得られた消火特性は非常に単純で有り,Cup burner法によって決定された不活性ガスの消火効果の順位と,ゴム風船消火実験で得られた不活性ガスの消火効果の順位は全く同じであった.そして更に,完全消火が達成できる不活性ガスの最小体積つまり消火限界Vexの値によって決まるρCpVexの値を,液体燃料の単位質量あたりの発熱量Qを除したQ/ρCpVexの値が,容器径が決まると一定の値を示すことがわかった.このことは,ゴム風船消火での消火達成が,不活性ガスの熱的な消火効果によって行われていることを意味している.
今回,紹介したゴム風船消火の研究成果では,火源へのゴム風船の輸送については全く検討していない.しかし現在,弘前大学理工学部知能機械工学科の岩谷靖准教授の協力を得て,不活性ガスを充填したゴム風船を火源へと輸送するための小型航空消火ロボットの開発を行っている[24].この研究では,消火ガスを充填したゴム風船を抱えた複数の航空消火ロボットが,互いに連携して消火ロボットごと火源へと突入することで火災消火を達成することを目指している.
最後に,冒頭で述べたように現在の消火技術は,首都圏直下地震などの大規模災害が生じた後に発生することが予想されている火災に十分対応できているとは言いがたい.また今後高齢化社会を迎える日本において,火災が発生したときに力が弱くまた行動が機敏でない人でも簡単・迅速にそして確実に消火を達成できる技術の開発も重要であると考えている.もし本稿を読んで,少しでも火災消火の研究に興味を持ってくださる方がいれば望外の喜びである.
本研究は科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究,課題番号:23651160の支援を受けて行われた.ここに記して謝意を表す.
参考文献
[1]. |
関澤愛,特集:自主防災組織の活発化と地域防災力の向上のために,日本火災学会誌,Vol.61, No.5, pp.1-2, 2011. |
[2]. |
日本火災学会 地震火災専門委員会,阪神・淡路大震災から15年後の地震火災研究の現況と今後30年の展望,Vol.61, No.1, pp.7-14, 2011. |
[3]. |
日本火災学会,2011年東日本大震災に関する消防機関からの報告(その1),日本火災学会誌,Vol.62, No.4, pp.30-49, 2012. |
[4]. |
日本火災学会,2011年東日本大震災に関する消防機関からの報告(その2),日本火災学会誌,Vol.62, No.5, pp.30-52, 2012. |
[5]. |
日本火災学会,2011年東日本大震災に関する消防機関からの報告(その3),日本火災学会誌,Vol.62, No.6, pp.24-39, 2012. |
[6]. |
日本火災学会,火災便覧(新版),共立出版,pp.970-1015,1984. |
[7]. |
日本火災学会監修,火災と消火の理論と応用,東京法令出版,pp.221-230, 2005. |
[8]. |
G. Granta, J. Brentonb and D. Drysdale,Fire suppression by water sprays,Progress in Energy and Combustion Science 26 pp.79?130, 2000. |
[9]. |
Zhigang Liu and Andrew K. Kim, A review of water mist fire suppression systems-Fundamental studies, J. of Fire Prot. Engr., 10 (3), pp.32-50, 2000. |
[10]. |
永井恒司,放出制御型薬物送達システム,薬学雑誌,Vol.108, No.7, pp.613-624, 1988. |
[11]. |
特許庁,平成22年度特許出願技術動向調査報告書(概要) ドラッグデリバリーシステム(DDS),pp.1-4, 2010. |
[12]. |
NEDO海外レポート,薬剤搬送システム(DDS)の技術傾向と開発(米国),No.962, pp.62-66, 2005. |
[13]. |
Hiroyuki Torikai, Takumi Murashita, Akihiko Ito and Takumi Metoki, Proceedings of the 10th International Symposium on Fire Safety Science. International Association for Fire Safety Science, pp.557-568, 2011. |
[14]. |
Takumi Murashita, Hiroyuki Torikai and Akihiko Ito, Flow visualization of extinguishing gas released from bursting soap bubbles, Visualization of Mechanical Processes, Vol.2, No.2, 2012. |
[15]. |
Hiroyuki Torikai, Manato Narita and Akihiko Ito, Extinguishment of pool fire with rubber balloon inflated with inert gas, Proceedings of the 24th International Symposium on Transport Phenomena, 2013. |
[16]. |
Kohei Watanabe, Hiroyuki Torikai and Akihiko Ito, Extinguishment of a jet diffusion flame with an inert-gas soap bubble transported by a vortex ring, Proceedings of the 24th International Symposium on Transport Phenomena, 2013. |
[17]. |
鳥飼宏之,椎橋佑至,伊藤昭彦,球状氷カプセルを用いた粉末消火剤による拡散火炎の消火第50回燃焼シンポジウム,pp.482-483, 2012. |
[18]. |
Yuki Chiba, Hiroyuki Torikai and Akihiko Ito, Extinguishment characteristics of a jet diffusion flame with inert gas vortex ring, Proceedings of the 7th International Symposium on Scale Modeling, 2013 (on USB). |
[19]. |
Hiroyuki Torikai, Shouta Saito, Akihiko Ito, Extinguishment of a methane air diffusion flame by using blast wave, Proceedings of the 29th International Symposium on Shock Waves, 2013. |
[20]. |
久野彰治,鳥飼宏之,伊藤昭彦,高温壁面に衝突した単一水滴から生じた水蒸気による拡散火炎の消火,日本機械学会熱工学コンファレンス2012講演論文集, pp.315-316, 2012. |
[21]. |
N. Saito, Y. Ogawa, Y. Saso, C. Liao and R. Sakei, Fire Safety Journal, 27, pp.185-200, 1997. |
[22]. |
JSME, Combustion Handbook, Maruzen, Tokyo, p.286, 1995. |
[23]. |
F. Takahashi, G. T. Linteris, and V. R. Katta, Proc. Combust. Inst. 31, pp.2721-2729, 2007. |
[24]. |
Miku Sato, Hiroyuki Torikai and Yasushi Iwatani, Flame extinguishment by a prototype of an aerial extinguisher with an inert gas capsule, Proceedings of SICE Annual Conference, pp.2051-2056, 2013. |
|