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有機系廃棄物と酸化鉄混合体の反応特性 |
植木 保昭 名古屋大学 助教 エコトピア科学研究所 エネルギー科学研究部門 ueki@esi.nagoya-u.ac.jp |
1.はじめに 現在,日本国内では年間約5000万トンもの一般廃棄物が排出されており,その約8割が直接焼却処分され,多くのCO2を排出し,地球温暖化に加担しているのが現状である.この一般廃棄物の約50%(重量比)は炭素と水素を多く含有する有機系廃棄物であり,石炭などの化石燃料の代替原料としてのリサイクルの可能性が示唆されている. 2.実験方法 本実験ではポリエチレン(PE)とゴミ固形化燃料(RDF)を還元材として使用した.PE試薬は粒子直径−425µm,RDFは粒子直径−600µmに粉砕したものを実験に用いた.Table 1にPE試薬とRDF粉の元素分析と工業分析の結果を示す.PEは水素と炭素のみから成り,RDFは酸素と固定炭素,灰分を含有している.
3.実験結果および考察 3.1 有機系廃棄物-酸化鉄混合体の反応挙動 試料H-PEおよび試料H-RDFの1000℃と1300℃での重量変化率曲線をそれぞれFig. 2とFig. 3に示す.ここで示した重量変化率は,重量変化量を実験前の試料重量から鉄および灰分の重量を引いた重量で割った値である.1000℃では試料H-PEの重量変化率は約0.6で停滞したが,試料H-RDFの重量変化率は約0.95まで達した.この時の試料H-PEと試料H-RDFの最終還元率はそれぞれ40%と93%であった.1300℃では試料H-PEの重量変化率は約0.8で停滞したが,試料H-RDFの重量変化率は1.0に到達した.この時の試料H-PEと試料H-RDFの最終還元率はそれぞれ63%と100%であり,温度上昇にともない両試料とも最終還元率が増加した.このように,試料H-PEでは反応が途中で停滞したが,試料H-RDFでは反応がほぼ終了した.また,最終還元率が試料H-PEよりも試料H-RDFの方が高くなっており,このような違いは有機系廃棄物と酸化鉄混合体の反応挙動が有機系廃棄物の種類に依存していることを示している.
1000℃と1200℃でのPEおよびRDFの熱分解時と試料H-PEおよび試料H-RDF還元時における各生成物への水素の転換率をFig. 4に示す.図中の‘others’は未測定の高次の炭化水素ガスやタール,残留チャー,煤などへの転換率を示している.PEおよび試料H-PE の場合,すべての温度において H2への転換率は熱分解時よりも還元時の方が大きく,また温度上昇とともにH2への転換率は大きくなり,1200℃で60%に達した.また,還元時にH2Oが発生していることから,(1)式に示すH2による酸化鉄の還元が生じていることが確認された.しかしながら,温度上昇にともないH2Oへの転換率は減少している.この温度上昇にともなうH2の増加とH2Oの減少は,熱分解により生成した固体炭素によるH2Oの改質反応,すなわち(2)式で示す水性ガス反応の活発化によるものと考えられる.
RDFおよび試料H-RDFの場合,熱分解と還元によるH2への転換率はほとんど同じであり,それらは温度上昇にともない増加し,1200℃で50%以上に達した.試料H-PEと同様に,H2Oへの転換率が熱分解時より還元時の方が大きいことから,(1)式のH2による酸化鉄の還元が生じていた.また,PEの場合と同様に,1000℃から1200℃への温度上昇によりH2Oへの転換率が減少しており,水性ガス反応(2)式によるH2OのH2への改質が温度上昇にともない促進されたことによるものと考えられる.
1000℃と1200℃でのPEおよびRDFの熱分解時と試料H-PEおよび試料H-RDF還元時における各生成物への炭素の転換率をFig. 5に示す.PEおよび試料H-PE の場合,PEの熱分解では,温度上昇にともない‘others’への転換率は増加し,CH4への転換率は減少した.このCH4への転換率減少の理由は,温度上昇によりCH4のH2と炭素への分解が促進されたためである.試料H-PEの還元では, ‘others’とCH4,CO2への転換率は減少した.しかし,COへの転換率は増加し,1200℃で約60%に達した.これらの結果は,CH4の分解により生成した析出炭素が水性ガス反応(2)式と(3)式に示したブドワー反応によって消費されたことを示している.
試料H-RDFの還元時のCOへの転換率は1200℃で60%以上に達した.また,全ての温度において,試料H-RDFのCOへの転換率は試料H-PEのCOへの転換率より大きかった.これはブドワー反応(3)式で消費される固体炭素,つまり試料H-PE中の析出炭素より試料H-RDF中のチャー生成量が多いためであると考えられる.さらに,このチャーによるCOへの改質が(4)式に示したCOによる酸化鉄の還元反応を促進するため,PEよりもRDFを還元材として使用した方が高い最終還元率が得られる.
4.おわりに ポリエチレンおよびゴミ固形化燃料といった有機系廃棄物と酸化鉄混合体の高温不活性雰囲気下での反応特性を実験的に検討したところ,有機系廃棄物の熱分解によるH2への転換率と有機系廃棄物-酸化鉄混合体の還元によるH2への転換率はほとんど同じであるが,還元によるCOへの転換率は熱分解によるCOへの転換率よりも大きく,還元材として有機系廃棄物を使用する場合,高い最終還元率を得るためには,チャーを多く生成する有機系廃棄物が適していることが分かった.以上のことから,酸化鉄の還元材として有機系廃棄物を利用することが可能であるものと考える.
参考文献
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