―本書の趣旨・特色― 水および水蒸気の熱物性をはじめ工業上重要な諸性質に関しては,1934年以来日本機械学会によって蒸気表として集大成され,信頼できかつ利用しやすい形態の数値,数式,線図情報として産業界・学界の利用者に広く活用されてきました.特に発電産業をはじめ火力・原子力発電システムや関連する各種動力プラント・機器の設計・製造産業に本学会刊行の蒸気表が多年にわたって果たしてきた貢献は極めて大きなものがあります.
この蒸気性質の研究の大きな特色は,様々な国際協力による国際標準としてその成果が集大成されてきたことです.1963年には国際骨組蒸気表が集大成され,新しい国際標準として,実用国際状態式が採択され,それに基づいて「1968日本機械学会蒸気表」が刊行され,その後単位を国際単位系(SI)を採用した「1980
SI日本機械学会蒸気表」が刊行されました.
今般国際水・蒸気性質協会(IAPWS)における約10年におよぶ国際研究協力の成果として,実に30年ぶりに実用国際状態式が全面的に改訂され,「新実用国際状態式」(IAPWS-IF97)が完成されたのにともない,蒸気表改訂のため,「SI蒸気表改訂出版分科会」(主査 渡部康一君ほか25名)を設置し,2年間の審議の上完成をみたものであり,本会学術上また出版事業として画期的なものであります.従来の蒸気表にくらべて,本書は次のような大きな特色をもっています.
@ 準安定状態にある水蒸気の熱力学的数値表を加えた.
A 定積比熱に関する数値表および線図を加えた.
B 屈折率に関する数値表および線図を加えた.
C 静的誘電率,イオン積,およびpHに関する数値表を加えた.
D 本書に収録した水および水蒸気の熱物性表や線図を作成するのに用いたIF97をはじめ, 国際補完式などに関する解説を第3章にまとめたほか,第4章ではこれらの国際標準を生み出す母体となったIAPWSの活動や主要な成果について解説した.
E 折込みの線図として,特にボイラ業界の強い要望に応え,比エンタルピー・圧力線図を加えた.
F 付録としてCD-ROMを添付した.