我々の研究室では、ロボティクス・メカトロニクス技術を中心としたマルチスケールロボティクスに関して研究を行っている。最先端のメカトロニクス技術、マイクロ・ナノ技術を駆使したハードウェア技術と、人工知能や最先端の理論を融合して、究極のロボットシステムの実現を目指している。 マイクロ・ナノスケールロボティクスとしては、三次元マイクロ・ナノマニピュレーション技術を中心として、マイクロ・ナノ計測、マイクロ・ナノ加工、マイクロ・ナノ組立を実現することにより、新しいマイクロ・ナノデバイスの構築と医療・バイオ分野への応用を図っている。 (1)ハイブリット・ナノロボットマニピュレーションによるナノアセンブリシステム (2)環境制御型電子顕微鏡下ナノマニピュレーションシステムによる単一細胞計測・操作 (3)単一細胞計測・操作のためのナノデバイス (4)レーザートラップマニピュレーションシステムによる単一細胞操作・計測 (5)人工血管シュミレータと人工血管への応用 ロボット技術によるナノマニピュレーション環境を実現し、ナノ材料を自在に操作・加工・計測することが可能なナノアセンブリシステムを構築し、新規機能性ナノデバイスの創製を目指している。これまで走査型・透過型電子顕微鏡(SEM・TEM)下での三次元空間での実時間ナノマニピュレーションを実現したハイブリッド・ナノマニピュレーションシステムを構築し、多層カーボンナノチューブの外層部分を取り除いたテレスコピング・ナノチューブを透過型電顕下でその場作製し、印加電圧に応じた内層部の伸縮を確認した。また、カーボンナノチューブを任意の位置で高精度に切断するために、酸素ガスを導入し、電子線照射することで、短時間で切断する技術を見出し、本技術を応用してカーボンナノチューブの三次元ナノアセンブリを行った。 現在、単一細胞における局所的な計測・操作技術に基づいたナノバイオ応用について注目が集まっている。これまで、単一細胞計測技術として、主に用いられてきた原子間力電子顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)では、溶液中で計測ができる一方、試料の観察と操作・計測を同時に行うことはできず、二次元平面内に限定されるといった課題があった。我々は、環境制御型電子顕微鏡(Environmental-Scanning Electron Microscope: E-SEM)下でのナノマニピュレーションシステムを構築し、単一細胞の局所計測・操作のための三次元・実時間観察環境での新規ナノバイオマニピュレーションシステムを構築している。 有用微生物を産業応用する目的で、細胞の性質や培養条件を明確化するために、近年、単一細胞の特性を解析するためのバイオナノツールが求められている。我々は、単一の有機ナノチューブ(Organic nanotubes: ONT, 内径50 nm、外径400 nm、長さ約10 μm)をマイクロマニピュレーション技術により、マイクロガラスピペットの先端に取り付けたONTナノピペットを作製した。有機ナノチューブをナノ流路として利用し、電気的泳動力による蛍光溶液噴出実験により有用性を検証した結果、ONTナノピペットからの噴出量は印加電圧により制御可能であり、極微量での溶液の噴出が可能であることを確認した。 本研究では生物細胞のような微小な物体を操作するためのマニピュレーションシステムに関して研究を行っている。生物細胞や更に小さいDNAなどは接触プローブ型マニピュレータによって直接操作することは困難であると同時に操作対象を破壊してしまう恐れがある。そこで、本研究ではマイクロツールを応用したレーザ・マニピュレーションを中心とした非接触に操作に関する技術について研究を行い、非破壊・低侵襲なバイオマイクロマニピュレーションシステムの構築を目指している。また、計測機能を付加したマイクロツールの機能化や各種マイクロチップ技術を応用することにより、単一の微小な細胞を自在に操り、効率的かつ高度な操作・計測技術への応用を目指している。 本研究では医師が手術などを行う際の支援を行うシステムの開発を目的としている。特に血管内脳外科手術を例にカテーテルを用いた低侵襲手術における操作支援ならびに血管内情報の提示に関して遠隔操作、力覚提示などの技術に関して研究を行っている。CTやMRIの画像から、患者個々人の脳血管形状を三次元的に再構築し、それをマイクロ3次元造形によって透明立体モデル化することで、疾患状態の直感的な視認を可能にしている。また本技術を応用した生分解性人工血管を作製し、再生医療分野などへの応用研究も行っている。 |
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