来たれ!材料力学部門へ!

一一ジョイフルライフの追求一一

酒井智次(トヨタ自動車)

 材料力学部門PRの4回シリーズの第4弾です。材料力学と聞くと、昔学校で学んだいわゆる材料力学を思い浮かべ、何か古典的な、単純なモデルを用いて公称応力やたわみを求める、あの「材料力学」を連想してしまう人が多いようです。しかし、我が材料力学部門が扱う分野は、この連想から生まれる領域よりはるかに広く、先端技術分野も多く含んでいます。そういう点から、ネーミングが実態を表しておらず、誤解されている面も多いと思われるので、このニュースレターを読まれた皆様には材料力学部門に関する誤ったイメージを払拭し、会員獲得にご貢献いただくようお願いする次第です。ここでは、自動車の開発を例に、材料力学分野の内容とその重要性のついて紹介する。

IV.ジョイフルライフの追求

 ジョイフルライフの提供を目指す自動車の開発には多くの技術が必要であるが、ここでは材料力学部門に含まれる技術に絞って紹介する。
 (1)操縦安定性や加速性能は軽い車ほどよいことは知られているが、車両の軽量化には、新材料の評価技術(静的強度・疲労強度・耐環境強度等)、最適形状設計技術(FEM、BEM等)、材料強化手法などが必要である。(2)現在、交通事故の低減が社会的課題であるが、それと共に車両の衝突安全性の更なる向上も強く望まれる。車体がうまく衝突エネルギを吸収し障害を低減するように設計するためには弾塑性解析技術が不可欠であり、これには大変形計算力学を多用している。また、人体への傷害度合いの研究では人体構成要素の強度研究も行われている。(3)地球資源の枯渇に備えた高効率エンジンの開発は次世代技術として必要である。高効率と言えば高温状態での作動となり、高温強度に優れた新材料の開発と高温強度の評価技術確立が必須である。(4)地球環境保全のためには、省燃費化・排気浄化が必要だが、結果として、前記の軽量化と高温強度技術に行き着く。(5)最後に、地味だが最も重要な分野として、信頼性保証がある。故障解析や各種ストレスに対する寿命予測手法の改善、損傷評価手法から非破壊検査・余寿命推定手法の確立まで、なかなか難しいものの、今後必ず必要となるテーマが多く残されている分野である。
 以上のように、材料力学分野は、重要でやりがいのある先進的なテーマが多く存在し、若くて意欲的な研究者・技術者が活躍できる有望な分野であると確信している。

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