さらなる「社会のための機械学会」、 |
120年近い長い歴史と高い実績を持ち、約36,000人の会員を擁する日本機械学会の第92期会長を仰せつかりましたことに、身が引き締まる思いです。本会がこれまで発展・展開してきましたのも、矢部 彰 前会長をはじめ、歴代の理事会、支部、部門、部会、センター、ならびに多くの委員会の委員および本部、支部事務局の皆様のご尽力の賜と存じます。篤く御礼申し上げます。
第92期のはじめにあたり、今期の見通しと重点課題および会員の皆さまへのお願いを述べさせていただきます。
<学会の財政基盤を確実なものにするために>
本会は、第89期および第90期におきまして大幅な赤字決算を計上しました。第91期におきましては、矢部会長のリーダーシップのもと経費削減をはかり、黒字決算にこぎつけることができました。これも支部、部門の皆様をはじめ、関係の会員のご努力が結実したものと存じます。またこのことは、本会の底力の大きさを示したものと思います。
第92期には、消費税率アップの影響等が見込まれ、第91期と同様の黒字決算ができるかどうかは、予断を許しません。また、第91期には黒字化に向けて新規の活動を抑制してきた向きがあり、新たな活動を展開するには、原資が必要です。引き続き、財政基盤を確実なものにするため、ご協力をお願い申し上げます。
<今期、重点的に検討する課題について>
第91期理事会内に設置した政策・財務審議会におきまして、「学会の近未来像」について議論し、また個々に意見をうかがってまいりました。この議論を背景に、第92期には、以下の課題について重点的に検討していきたいと考えております。
(1) 情報交流と情報発信
学会ならびに会員からの学術・技術情報の発信の中核をなす学術誌については、第90期までの議論を踏まえ、機械工学の全分野をカバーする新学術誌(The Bulletin of JSME)の名のもと、第91期にMechanical Engineering Reviews, Mechanical Engineering Journalおよび日本機械学会論文集を創刊しました。これらに続き、来年にはMechanical Engineering Lettersを創刊する予定です。これらの学術誌の認知度を向上させるための方策を積み重ねてまいります。
機械工学の各分野ならびに会員の発展のためには、学会内外の交流が大きな役割を果たします。このため、特に部門・支部を超えた横断的な機械学会内の情報共有と発信、異分野との交流を促進していきます。海外の機械工学関連学会とも連携を進め、国際的な広報にもつとめてまいります。
本会には、学術誌、講演論文集をはじめ、多くの知的情報の蓄積があります。これらをデータベース化・アーカイブ化することにより、各会員が情報を検索し取得できるようになります。特に会誌8月号には、年鑑として各年の学術・技術情報がまとめられています。さらに年鑑執筆者の手元には、印刷されていない膨大な情報が集められています。これらの情報をアーカイブとして提供することができれば、大いに役立つものと考えられます。手始めとして今年8月号の年鑑については、電子情報を会員に開放する予定です。機械工学便覧もDVD化され、検索が容易にできるようになりました。会員が個人でお求めいただけるよう価格も低く抑えております。是非ご活用ください。
機械工学・技術の教育に関して、本会では教科書シリーズの図書を刊行してまいりました。編集者、執筆者はじめ関係の皆様のご尽力により、好評をいただいております。この教科書に限らず、会員が自学自習するとき、また会員が教える立場になったときに役立つような、教育資料リソースを蓄積し、会員が使えるようにしていきたいと考えております。
「機械工学」の社会的認知度の向上には、皆様のご尽力による「機械の日」行事と「機械遺産」が大きく貢献しています。今後も、一般市民からの認知度向上に努めてまいります。
本会が「機械工学」を代表する学会として国・機関に提言ができないかというご意見をよく耳にします。第91期末には、文部科学省 科学技術・学術政策研究所の依頼により、第5期科学技術基本計画の作成にむけたフォーサイトワークショップを開催しており、理事会メンバー、部門長・幹事ほか50名ほどにご協力いただきました。第92期には、このような活動を積極的に行う予定です。
(2) 会員の地位向上と能力開発
本会には、会員の能力開発と地位向上に資するものとして、計算力学技術者資格認定事業や機械状態監視資格認証事業があり、それぞれ数千人規模の認定者を出しています。これらとともに、継続的に研究活動を行っておられる一般会員の実績を認定し、また本会の活動に貢献してこられた方を表彰することがあってよいと思います。このような表彰・認定・認証制度の拡充を検討してまいります。
企業等で定年を迎えられた会員の方々は、学術的・技術的実績をもっておられます。それらを次代に引き継いでいただくためにも、シニアの役割は大きいと思われます。いくつかの支部でシニア会が発足し、活動を開始されています。シニアの活動を広げていきたいと思っております。また、フェローの方々は、会員の中の選ばれた方々です。フェローならではの貢献をお願いしていきたいと思います。
(3) 財政基盤確保と事業の見直し
本会の活動は多岐に亘り、財務が複雑ですが、第91期に見える化を進めていただきました。第92期は、さらに経費削減を推進し、正味財産を指標とした財務の見える化と期中進捗管理を進め、財政基盤の確保に努めたいと思います。
本会の第二世紀構想が議論されて20年近くになり、そのときに事業構造が変りました。上記の財政基盤確保ともからめ、事業構造を見直してまいります。
<最後にお願いとして>
本会は学術的・技術的に大きなリソースをもちながら、それを十分には活用していないように思われます。会員の皆様が、本会会員であることの誇りとメリットが持てるような方策につき議論を進め、会員の皆様のご意見をうかがい、集約してまいります。本会が、「会員の、会員による学会」だけでなく、「会員のための学会」、「社会のための学会」であるためには、いろいろな活用法があると思われます。ご提言をお願いいたします。また、日本の機械工学・技術の情報発信の基盤を盤石なものとするため、ご研究のある割合を新学術誌にご投稿いただき、新学術誌の発展にご貢献いただきますようお願いします。引き続き、本会に対しご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
(2014年4月18日 定時社員総会あいさつより)