イブニングセミナー(第179回) 裁判での判断を支える技術鑑定
【開催日】
2014年11月26日(水)18.00~20.00
【趣 旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【テーマおよび講師】
様々な利害関係が交錯する問題や事故の裁判では,法理論に基づいた公平さと人々が納得できる世間常識により裁かれる.しかし,社会の科学・技術による複雑で専門的な発達は,一般の人々の理解を超える専門領域と専門常識を産み出し,これが裁判所の中まで続いている.
機械構造,電子回路,化学反応,生物適合性,放射線被曝などの全てが分かる専門家などいないが,裁判ではあらゆる物事が持ち込まれ,裁判官のみならず弁護士,検察官も理解して適切な判断をしなければならない.このため,専門領域における事故では何が真実で何が誤謬かを,定量的で明確かつ平易に解説をする科学・技術の専門家である鑑定人が必要となる場面が多くなっている.
理論的には判っていても見落としや思い違いも多い.「半焼け」よりも「黒焦げ」の方が火力が激しいのは,世間常識でも専門常識でも同じだが,専門家は目に見えない「燃え尽きたもの」を探す.配管の底を空気に触れながら水が流れれば大きな音がするが,満水流れは音が小さい.楽器の反響には空洞が必要と知っていても配管では別物と考える.強力なブレーキを持つ車ほど速く走れることに違和感を感じる.
一つの傷の持つ意味は,時と共にやがて誰もが理解できるようになるが,その時点では残されたのみの事実から真実を推定,論理構築しなければならない.推論が1つでないならば,それにヒューマンエラーが加わると,可能性は広がり判断には理論の他に経験が必要である.
今回は,法廷での実際の鑑定論戦を例に,事実の科学的な見方について語っていただく.YK
講師: 森山 哲 (有)森山技術士事務所 代表,技術士(電気電子部門・総合技術監理部門)
<懇親会> 大学近くの「パブレストラン アミ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
会費 3 000円程度
次回予定:2014年12月17日(水)18.00~20.00